バルサは安部裕葵のどこに惚れたのか。「久保より先に追っていた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Watanabe Koji

 なにより、この移籍ケースでのトップチーム定着が1件もないという現状がある。

 現実的に考えれば、実質3部で活躍しても、その選手をトップチームには引き上げることはできない。それはたとえ2部でも、そう変わらないだろう。レベルの差がありすぎるのだ。

 下部組織を通じて育てられた選手なら、トップでプレーするうえでの利点がある。クラブのプレー規範が叩き込まれているからだ。しかし20歳前後でやってくる選手はそうではない。それだったら1部リーグの有力選手を補強する方が手っ取り早いのだ。

<バルサのブランドで箔付けし、中堅クラブに高く売る>

 実際には、バルサBの選手はそうなる可能性のほうが高い。たとえば500万ユーロ(約6億5000万円)で獲得したブラジル人DFマルロン・サントスは、1シーズン、バルサBでプレーさせ(トップチームでも2試合出場)、ニース(フランス)に貸し出し後、サッスオーロ(イタリア)に600万ユーロ(約7億5000万円)プラス出来高(50試合出場)600万ユーロで売却。堅実に利益を上げた。

 選手にとっても悪い話ではない。トップチームに昇格する可能性は常にある。同時に、それが無理でも中堅クラブでセカンドチャンスが得られるのだ。

 フローニンゲン(オランダ)で堂安律のチームメイトだった18歳のMFルドヴィト・ライスも、来季はバルサBに加入する。展開力や持ち上がる迫力だけでなく、ボールを奪う能力も際立つ。戦闘力の高い選手である。

 安部も20歳と若いが、物怖じせずに技術を出せる。コパ・アメリカでも、南米の手練れを相手に1対1で対峙しても負けていなかった。ゴールに近づくにつれ、怖さを増し、ひ弱さを見せなかった。

 その点でも安部はバルサのお眼鏡にかなったということかもしれない。

 おそらく安倍は、逆足の左サイドアタッカー、もしくは「フェイク9」での起用になる。左サイドから中へ切り込み、右足で決定的仕事をするか、ボックス付近でゴールに迫り、プレーメイクにも絡む。

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