シメオネ8年目の大博打。アトレティコ「エースの取り換え」は吉か凶か
アトレティコ・マドリードに所属するフランス代表FWアントワーヌ・グリーズマン。そのバルセロナ移籍決定は、「7月11日がXデー」と囁かれている。想定される移籍金は1億2000万ユーロ(約155億円)で、年俸2100万ユーロ(約27億円)。移籍金の分割払いや年俸引き下げなどの交渉が続いており、予断を許さない状況ではあるが、詰めの段階を迎えている。
アトレティコはすでに、エースを務めてきたグリーズマンの代わりに、ポルトガル代表FWで19歳のジョアン・フェリックス(ベンフィカ)を獲得している。移籍金は1億2700万ユーロ(約160億円)、年俸は600万ユーロ(7億8000万円)。新シーズンに向けチームは「エースの取り替え」という大きな博打に出た。
はたしてグリーズマンを失い、ジョアン・フェリックスを得た、そのプラスマイナスは――。
バルセロナへの移籍が秒読み段階と言われるアントワーヌ・グリーズマン アトレティコはこれまでも大きな博打を張り、大きく勝ってきた。
2011年12月にディエゴ・シメオネが監督に就任して以来、今年6月末時点までで1000億円近くを戦力補強に費やしている。その見返りは大いにあったと言っていいだろう。リーガ・エスパニョーラ優勝、スペイン国王杯優勝、ヨーロッパリーグ優勝2回。そしてチャンピオンズリーグでは2度も決勝に進出している。狼の群れが襲いかかるようなプレッシング、難攻不落の城砦のような分厚い守り、そして大鷲の猛襲を思わせるカウンターを実現させ、欧州全土を震撼させてきた。
「ポゼッション率になどなんの関心もない。15回決定機を作ってノーゴールよりも、1-0で勝利する方を選ぶ」
シメオネはそううそぶいて、勝利への効率的手段だけを追求した。プレッシングとリトリートを鍛え上げ、前線にはカウンターで敵を仕留められる選手を配置。勝利の軍団を作り上げたのだ。
その功績を評価されて、シメオネ本人は年俸2200万ユーロ(約28億円)の契約を勝ち取っている。今や伝説の将軍であるかのように、アトレティコのサポーターからも崇められている。好待遇は当然の権利だろう。
1 / 3