ブラジルを熱狂させたアルゼンチン戦。勝因は効率性とダニ・アウベス

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 これまで、コパ・アメリカ2019のベストマッチは、まぎれもなくウルグアイ対日本の一戦だった。そのほかの試合は、見るに値しないものも多かった。日本のサッカーは目の肥えた南米の人々を楽しませてくれた。しかし、それから12日、その順位は塗り替えられた。なぜなら、ついに本物のショーが繰り広げられたからだ。

 クラシコの中のクラシコ、積年のライバルであるビッグ同士の激突、コパ・アメリカ準決勝ブラジル対アルゼンチン。両国はその名にふさわしい戦いを見せた。強く、テクニカルでハイレベル。南米サッカーの粋をあつめたような、見るものすべてを魅了する一戦だった。コパ・アメリカだけでなく、ここ数年間見られなかったような好試合だった。

勝利を喜ぶブラジルイレブンと、呆然とするリオネル・メッシ photo by Watanabe Koji勝利を喜ぶブラジルイレブンと、呆然とするリオネル・メッシ photo by Watanabe Koji この日のアルゼンチンは、ほぼ完璧だった。リオネル・メッシ、セルヒオ・アグエロ、アンヘル・ディ・マリア、ラウタロ・マルティネス、ニコラス・オタメンディ......彼らは本当にすばらしかった。メッシはバルセロナで見せるプレーの半分くらいの力しか出せていなかったかもしれないが、それでも天才だった。

 アルゼンチンはスピーディーで強靭で、なによりアグレッシブで闘志にあふれていた。正直言って、彼らはブラジルよりずっといいプレーをしていた。アルゼンチンがブラジルゴールに向かって放ったシュートの数は14、そのうちゴールの枠に嫌われたシュートも2本ほどあった。一方、ブラジルはたったの4本だ。しかし、2-0で勝利したのはブラジルだった。それはブラジルが非常に効率的にプレーしたことと、守護神アリソンがいたからだ。

 リバプールでプレーするGKアリソンは、アルゼンチンのシュートを3本止めた。そのうちのひとつはメッシの絶妙な、普通なら防ぎようのないようなFKだったが、これも完璧な形でセーブした。アリソンは最近の代表戦10時間無失点(PK戦は除く)。つまり7試合で一度もゴールを奪われていない。リバプールの試合も含めれば、5月4日から60日間ゴールを許していない。

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