ブーイングが拍手に。ブラジルはようやくサポーターの信頼を勝ち得た (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 その後、ダニエウ・アウベス(パリ・サンジェルマン)、アルトゥール(バルセロナ)、エベルトンのダブルワンツーからこの試合4点目のゴールが決まると、ブラジルの士気はより一層高まった。結果は5−0。開幕当初の沈滞ムードをこのペルー戦で見事に吹き飛ばし、ブラジルは2勝1分・8得点0失点という好スタッツでグループステージを首位突破した。

 6月27日、グレミオ・アレーナで行なわれた準々決勝。ブラジルと対戦したパラグアイは、老獪なチームだった。

 パラグアイは、それまで右サイドハーフで攻撃を牽引してきたデルリス・ゴンサレス(サントス)を偽ストライカーとして1トップに抜擢し、ブラジルの守備を撹乱した。また、左サイドバックのサンディアゴ・アルサメンディア(セロ・ポルティーニョ)をFWに近い位置まで上げて、ダニエウ・アウベスの攻撃参加を見張らせたのも効果的だった。

 これでブラジルの右サイドのリズムが狂ったのか、ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)は技術的なミスと判断ミスを繰り返した。攻守をつなぐ中盤のリンクマンとして存在感を放つアルトゥールも、彼にしては珍しいイージーなミスが散見された。

 バランスゲームの様相を呈した前半は、0−0のまま終わった。すると、かすかに非難のブーイングが聞こえてきた。だが、そのブーイングの上から被せるかのように、大きな拍手がロッカールームに戻るブラジル・イレブンに贈られた。

 グループステージの3戦を通じて、ブラジルのサポーターにもいろいろ思うところがあったのかもしれない。もしかすると、グレミオでプレーするエベルトン、グレミオからバルセロナへ羽ばたいていったアルトゥールがピッチに立っていることで、シンパシーを感じたのかもしれない。この夜のスタジアムには、青・黒・白の縦縞で彩られたグレミオのユニフォームを着たサポーターも少なからずいた。

 そんな彼らは、0−0のまま進んだ後半もブーイングをすることなくゲームを見守り、やがて「ブラージウ! ブラージウ!」と歌い出した。ブラジルは苦しい時に、ようやく自国のサポーターの声援を背に受けて戦うことができたのだ。

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