コパ最下位で高まる不協和音。アルゼンチンが頼るは「奇跡」のみだ (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 メッシがシュートを放つ前のプレーで、アルゼンチンのラウタロ・マルティネスのシュートを、パラグアイのDFイバン・ピリスがブロックした際のハンドがとられたのだが、ピリスはシュートを腰で止めた後、ボールはまず彼の足に当たり、その後、手に当たっている。導入されたFIFAの新ルールに照らし合わせてもファウルではない。

 その証拠に、アルゼンチンの選手でさえ、誰もPKを主張してはいなかった。しかし、メッシは何もわからない風を装って、PKを決めて同点にした。アルゼンチンは茶番に救われた。

 この同点弾で、アルゼンチンサポーターはにわかに活気を取り戻した。声を合わせて声援を送り出した。チームもそれに呼応して目覚め、すべての流れは変わるかのように思えた。しかし――それは単なる錯覚に過ぎなかった。

 その数分後、この日、一番ひどい出来だったニコラス・オタメンディのデルリス・ゴンサレスに対するファウルで、今度はパラグアイにPKが与えられた。これでアルゼンチンは終わったかのように思えた。そしてパラグアイは決勝トーナメント出場を確実にしたかに見えた。しかし、この日、アルゼンチンが試合を引き分けで終えられたのは、ひとえにGKフランコ・アルマーニのおかげだ。このPK以外にも、少なくとも3つのすばらしいセーブを見せていた。

 しかし、アルゼンチンの見せ場はそれだけだった。アルゼンチンは相変わらず相手ゴールまでたどり着くことができない。メッシはピッチの中で孤立し、アグエロはいないも同然。現実はアルゼンチンにとってどんどん厳しいものになっていった。

 試合後、メッシは「アルゼンチンがここで敗退するなど馬鹿げている」と、コメントした。

 だが、アルゼンチンのプレーを見る限り、メッシのこの言葉には失笑せざるを得ない。アルゼンチンが引き分けられたのは、あり得ないPKが与えられたからであり、相手のPKをGKが止めてくれたからだ。本当ならパラグアイが2-0で勝つべき試合だった。

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