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トッテナムが台頭した理由。
金も選手も「サッカーの首都」に集まる (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 アーセナルが試合当日の売り上げで上回った4200万ポンド(約58億円)は、いわば「ロンドンへの配当」だろう。この金でアーセナルは(そして今後はトッテナムも)、トップ選手をひとりかふたり買うことができる。

 しかもロンドンのクラブは、移籍市場で狙いを定めた選手にも、ロケーションでアピールできる。ロイ・キーンは2006年から2008年にかけてサンダーランドの監督を務めていたとき、「ロンドンにあるというだけの理由でロンドンのクラブに行きたがる選手がいる」とぼやいた。「サンダーランドに来たくないなら、別にかまわない。けれど、その理由が『妻がロンドンでショッピングをしたがっている』ということだと、ちょっと寂しい」

 2013年、リバプールにいたルイス・スアレスは、アーセナルへの移籍をいったん決意した。その理由を、スアレスは回顧録にこう書いている。

「ロンドンにいれば、フットボール選手は目立たずにすむ。それは私の望みでもあった。(リバプールでは)ちょっと外に出てスーパーに行こうとしただけで、たいへんなことになっていたから」

 けれどもスアレスは、翌2014年にバルセロナに移籍した。ロンドンのクラブをしのぐ何かを持っているクラブが、ほかにあるということなのだろう。

 同じ年、アレクシス・サンチェスがリバプールよりアーセナルを選んだとき、当時リバプールの監督だったブレンダン・ロジャーズは「これはわれわれの熱意が足りなかったせいではない。選手とその家族が住む場所を選びたかったというだけの話だ」と言った。

「ロケーションがいいから、このクラブに移籍した」と自ら明かす選手は、ほとんどいないだろう。しかし代理人のジョン・スミスは、移籍市場には「ロンドン割引」というものがあると考えている。ロンドンのクラブでプレーしたい選手は、他地域のクラブに行った場合より年俸が安くても受け入れることがあるというのだ。

「ロンドン割引」は、とくにウェストハムやフルハムのようなクラブにとって、おいしい話だろう。これらのクラブは、チームの"格"のわりにはビッグネームの選手を数多く獲得してきた。

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