トッテナムが台頭した理由。
金も選手も「サッカーの首都」に集まる

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】
「サッカーの首都」になったロンドン(後編)

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 ロンドンが「フットボールの首都」に成長する動きのなかで重要なポイントは、ロンドンの観客はスタジアムに金を落とすということだ。2018-19シーズンのプレミアリーグ所属クラブのシーズンチケットで、高額だった上位5クラブはすべてロンドンを本拠地にしていた。

 各クラブのシーズンチケットの最高額は、トッテナム・ホットスパーの2200ポンド(約30万円)からフルハムの1149ポンド(約16万円)までばらつきがあるが、比較のために書いておくとマンチェスター・ユナイテッドのシーズンチケットの最高額は「わずか」950ポンド(約13万円)だ。
初のチャンピオンズリーグ決勝に挑むハリー・ケインらトッテナム・ホットスパーの選手たち photo by Getty Images初のチャンピオンズリーグ決勝に挑むハリー・ケインらトッテナム・ホットスパーの選手たち photo by Getty Images
 だからロンドンのクラブは、試合当日にフットボール界で最も多くの利益を手にすることができる。UEFAは、各クラブが観客1人当たりから得ている平均売り上げのランキングを毎年発表している。最新のデータである2017年度のベスト10には、ロンドンのクラブが3チーム入った(アーセナルが2位、チェルシーが3位、トッテナムが10位)。

 ロンドン勢を抑えてトップになったのはパリ・サンジェルマンだった。このクラブはヨーロッパ第2の経済圏であるパリにあることが利点になっている(ただし、世界的なスター選手を引きつけにくいフランスにあるという点では損をしている)。

 プレミアリーグの大半のクラブでは、試合当日の売り上げは収入全体の約10%しか占めていない。全20クラブのうち13クラブは、試合当日にスタジアムに足を運ぶファンから得ている収入が1シーズン2500万ポンド(約35億円)に満たない。テレビ放映権料やスポンサー料のほうが、はるかに大きい。

 けれどもロンドンでは、試合当日のスタジアムでの収入が他の地域に比べて大きくものを言う。アーセナルは2017-18シーズンにヨーロッパリーグにしか出られなかったが、試合日の収入は9900万ポンド(約137億円)にのぼり、売り上げ全体の4分の1を占めた。その一方で、このシーズンにチャンピオンズリーグに出場し、プレミア王者にもなったマンチェスター・シティは、試合当日の売り上げが5700万ポンド(約79億円)しかなかった。

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