CL大逆転劇総括。アヤックスになくトッテナムにあった「底力」の正体 (2ページ目)

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中山 たしかにジョレンテ投入によって、試合の流れは変わりましたね。でも、アヤックスは第2戦の前半を終えるまではほぼパーフェクトだったと思います。アウェーでの第1戦を1-0で勝って、ホームでの第2戦の前半で2ゴールを追加して、つまり2試合合計4分の3の段階で、3点のアドバンテージを手にしていたわけですから、申し分のない状況だったと思います。

 ただ逆に、バルサの大逆転負けにも共通していますが、結果的にそれが今回のストーリーの導火線になってしまった。もし前半を0-0、あるいは1-0で折り返していたら、違うストーリーが展開された可能性は高かったと思います。でも、3-0になったことで、マウリシオ・ポチェッティーノ監督はクロップと同じように「イチかバチか」の心境になり、開き直って後半頭からジョレンテを投入したと思うんです。それも含めて、後半はアヤックスが完全に受身になってしまいました。

 これまでは常に挑戦者として攻撃的な姿勢を貫いて勝ち上がってきたアヤックスが、最後の45分間とアディショナルタイムは、3点のアドバンテージを手にしていたことによって、初めて守りきるという意識が自然と芽生えてしまったのではないでしょうか。そこが不幸の始まりだったような気がします。もっとも、これは結果論。監督や選手を責めることはできないですし、仕方ないことだと思います。

倉敷 たしかに第2戦をホームで戦うことが決まった時点で気になっていました。これまでは逆転で勝ち上がっていましたし、攻めながら守るチームなので、試合の終わらせ方も極端に守備的にはシフトできない。試合を終わらせる経験値も足りない。勝負が決まったのも96分という最後の最後のシーンですから、どうしようもありませんでした。

小澤 リバプール戦のバルサもそうでしたけど、アヤックスも日常的に国内リーグの試合で激しいボックス・トゥ・ボックスの応酬に慣れていないというハンデはあったと思います。あのような展開に持ち込まれると、やはりプレミア勢は強いです。

倉敷 同感です。ボックス・トゥ・ボックスの戦いでプレミア勢はズバ抜けていますね。それが現在のプレミア勢の強みだと思います。

小澤 アヤックスで残念だったのは、後半にあった決定機を逃したこと。バルサもそうでしたが、それを決めていれば結果は違っていたと思うので、そこは悔やまれるでしょうね。

倉敷 ジエクも気にして謝罪に近いコメントをしていました。でも彼は1ゴールを奪うために何本ものシュートが必要な選手であることをアヤックスファンは知っているので、2回あった決定機を決めていればと嘆いても「いつから君はそんなに決定機を決められる選手になったの?」と笑って慰めていました。

 でも、やっぱり第2戦はアウェーがよかった。第1戦では、予想どおりスパーズのサポーターが「アヤックスには負けるわけがない」という油断した空気を作っていましたからね。土壇場での逆転負けはショックですが、それでもアヤックスのファンは拍手を送っています。「よくやってくれた、誇りに思っている」と。

小澤 アヤックスは、この夏の移籍マーケットで多くの主力を引き抜かれてしまうと思いますが、来シーズンは厳しいと予想していますか?

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