2019.05.29

バルサは立ち直れるか。大逆転の連続のCLを達人が徹底的に語り合う

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中山 とはいえ、第2戦のバルサが油断をしていた、あるいは準備を怠っていたかと言われると、僕にはそうは見えませんでした。もちろん、結果論としてそういう風にあとから見えた部分はあったかもしれませんが、前半を1-0で折り返していましたし、立ち上がり早々の失点以外は特別な問題はなかったように感じました。まさか、後半から入ったジョルジニオ・ワイナルドゥムが54分、56分と立て続けにゴールを決めるなんて、想像もつきませんでした。

小澤 たぶん、リバプールのファンも想像していなかったと思いますよ。

中山 あのメンバー編成からすると、クロップ監督も半ばあきらめてこの試合に臨んでいたようにも見えましたしね。ワイナルドゥム投入も、そういう割り切りがあったからこそできた選手交代だったように思います。

小澤 しかも、前半で左サイドバックのアンドリュー・ロバートソンが負傷してしまいましたので、中盤のジェームズ・ミルナーを左サイドバックに入れたわけですから。バルサに関して言えば、たしかに早い時間に失点はしましたけど、前半は失点後、メッシを中心にカウンターでチャンスを作って、ルイス・スアレス、コウチーニョ、ジョルディ・アルバらの決定機は数回ありましたから、十分過ぎるほど1点を取るチャンスはありました。僕もそれほど問題があったようには見えませんでした。

倉敷 原因は何でしょう。優勝できる戦力があり、経験もある、それでもこういうことが起きる。ロジカルな印象もあるジョゼ・モウリーニョも「ユルゲン・クロップだから成し得たことだ」とこの試合については、かなりザックリとした結論のつけ方をしていました。

「アンフィールドだ」「ユルゲン・クロップだ」「これがサッカーの持つ奇跡だ、おとぎ話だ」と話を結んでしまってもいいのですが、もう少し粘りたい。では、バルサに何が足りなかったかを考えてみましょう。たとえば、やはり大逆転を喫した昨シーズンのCLローマ戦の敗戦で、強烈なトラウマが生じていたと考えると、それに抗う免疫を持った新しい選手がいなかったという考え方はどうでしょう?

小澤 しかもバルサは、昨シーズンのCL準々決勝のローマ戦の逆転負けを受けての今回でしたからね。誰もが3-0で勝っていてもまだ分からないと警戒して臨んだはずの第2戦で、また同じような負け方をしてしまったのは、説明のしようがありません。もはやバルサが今後永遠に背負っていかなくてはいけない傷であり、トラウマなのかもしれません。

倉敷 中山さん、パリ・サンジェルマンにも同じことが起こっていますが、バルサと共通するものはありますか?

中山 もろさという点で共通している部分があるのかもしれませんが、以前のバルサと違って近年のバルサは完全に勝者のチームになっていたと思うので、同列には扱えないですよね。パリはヨーロッパで勝者のチームになった歴史もないわけですし。ただ、クラブの伝統としては、バルサに勝負弱さがあったのは確かです。逆に、リバプールはアップセットを起こす伝統を持っているクラブなので、そういう点では、今回の対戦はクラブの伝統どおりの結果になったとも言えるでしょう。もっとも、リバプールは勝たなければいけない、勝つべき試合を落としてしまうという伝統も、その一方で持ち合わせていますが。

倉敷 クロップは「挑戦者」に相応しいキャラクターを持ち合わせています。「俺が責任を取るから思い切って前へ進め」と感情を隠さず、選手の背中を兄貴のように押していくタイプ。前がかりになってもディフェンス陣にアリソン・ベッカーやフィルジル・ファン・ダイクがいるのが強みです。失うものはない、ケガ人のことなどエクスキューズもある。前へ行くしかない状況は揃っていました。とはいえ、オフェンス陣はモハメド・サラーが不在、バルサはディフェンスだっていいチームです。