バルサは立ち直れるか。大逆転の連続のCLを達人が徹底的に語り合う

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蹴球最前線──ワールドフットボール観戦術── vol.66

 サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎――。この企画では、経験豊富な達人3人が語り合います。今回のテーマは欧州チャンピオンズリーグ(CL)の準決勝レビューと決勝のプレビュー。大逆転の結果に終わった試合を振り返った。

――今シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)も、いよいよ6月1日の決勝戦を残すのみとなりました。そこで今回は、お三方にいくつかのトピックスに分けて準決勝を振り返っていただき、最後にリバプール対トッテナムというプレミア対決となった決勝戦を展望していただきたいと思います。まずは、まさかの展開で準決勝敗退を強いられたバルセロナについて掘り下げていただけますか?

倉敷 スペインのメディアは、ヘッドラインに「バルサの歴史的失敗」、「史上最大の失態」、「恥」などと厳しく書き並べました。カタルーニャの新聞の方がマドリードの新聞よりも辛かったかも知れません。ちなみに中央紙のマルカは、「第1戦を3-0で勝っていても」「リバプールのスター選手がケガをしていても」「ラ・リーガのチャンピオンでも」「ローマでの苦い経験があっても」「決勝がスペイン開催でも」「レアル・マドリードがいなくても」「世界最高の選手がいても」と、どこにエクスキューズがあるの?とばかりに追求しました。

 バルサほどのチームがなぜこのような逆転負けを喫したのか? 小澤さんはどうお考えですか? たとえばエルネスト・バルベルデ監督のチームマネジメントの問題でしょうか?

CLで敗退し、落胆の色を隠せないバルセロナのメッシCLで敗退し、落胆の色を隠せないバルセロナのメッシ小澤 ただ、バルベルデは現状の戦力の中で勝ち上がるためのサッカーを準備する必要があるので、仕方ない部分はあったと思います。たとえばシーズンを通して先発起用してきたアルトゥールを下げてビダルを入れたことについては、リバプールに対してある程度ボールを保持することを放棄する覚悟の采配だと思いますし、確かにリバプール戦単体で見た時にはあれだけプレーインテンシティーの高い相手ですのでビダル起用自体を采配ミスだとは言い切れません。

 むしろ、フロントがバルサのフィロソフィーであるボール保持やゲーム支配にこだわることなく勝ちにいく采配を認めていること自体が問題なのではないでしょうか。また、今季はアルトゥールやクレマン・ラングレ、アルトゥーロ・ビダルの補強が当たったと言えますが、今のバルトメウ会長の体制下で獲得してきた新加入選手を一人ひとり見ていくと、相当の失敗と無駄使いがあります。

 今はコウチーニョばかりに批判の目が言っていますが、ネイマールをPSGに引き抜かれた直後に焦ってコウチーニョ、ウスマン・デンベレを獲得したフロントの判断や冬の移籍市場でレンタルとはいえ獲得したジェイソン・ムリージョ、ケヴィン=プリンス・ボアテングがまったく使われていない点を見ても、ペペ・セグラSDを中心しとしたフロントの体制にはもう少し批判が集まるべきだと考えています。

中山 第2戦が終わったあと、真っ先に思い出したのは、3-0でバルサが完勝した第1戦の試合後インタビューで、リオネル・メッシが「4点目を奪えなかったことが残念だった」と開口一番でコメントしていたことでした。第1戦の試合終了間際にデンベレが決定機を逃したことを指していたと思いますが、メッシはできるだけ多くゴールを決めておかないと何が起こるかわからないというCLの怖さをわかっていたから、あのような発言をあえて勝利直後にコメントしたのだと思います。

倉敷 コパ・アメリカで続いた苦い経験も背景にあったのでしょう。おそらくメッシの今季の目標はCLで優勝して、バロンドールを獲って、コパ・アメリカでアルゼンチンを優勝させることだったと思うので、ひとつずつ丁寧に集中して目標に近づこうと考えていたと思います。それゆえにデンベレのプレーに一抹の不安を感じたのでしょうが、残念ながら綻びは瞬く間に大きくなってしまいました。

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