2019.05.28

EL決勝は虚々実々。稀代の戦術家
ウナイ・エメリが真髄を見せるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 ウナイ・エメリは、欧州サッカーにおいて”希代の戦術家”として知られる。相手チームを研究し、手持ちの選手で最大限に相手を叩きのめせる布陣、戦い方を選択。試合の中での修正も巧みで、その慧眼は欧州でも随一と言える。

チェルシーとのヨーロッパリーグ決勝に挑む、アーセナルのウナイ・エメリ監督 エメリはフランスリーグのパリ・サンジェルマン監督を退任した後、今シーズンからプレミアリーグの強豪アーセナルを率いている。20年以上も監督を務めていた名将、アーセン・ベンゲルの後任として、当初は懐疑的な意見も少なからずあった。しかし、エメリは監督1年目でチームの統率に成功している。

 ヨーロッパリーグ(EL)ではフランスのレンヌ、イタリアのナポリを下した後、準決勝では古巣でもあるスペインのバレンシアを合計スコア6-3で撃破し、決勝に進んでいる。タイトル獲得まであと一歩だ。またプレミアリーグも5位と、昨シーズンの6位を上回り、ひとつの結果を出した。

「ベンゲルが22年間にわたってやってきたことは、リスペクトしている。しかし、チームは変化を必要としていた。(チームが部屋だとしたら)椅子をどかし、絨毯を干して、床を掃いて、窓を開ける。選手には『0kmから始めよう!』と伝えたよ」

 脚光を浴びる、”エメリイズム”とは――。

「私はディテール主義者と言われているようだね」

 エメリは自らの肖像についてそう語っている。

「それはポジティブに聞こえるが、なんでもかんでも選手に求めるわけだから、しつこい、という意味ではネガティブなことだろう。しかし、サッカーではスペースをどのようにシェアするのか、カバーし合うのかがとにかく大事だ。私はビデオでとことん研究し、選手たちに指示を伝える。ひとつずつ詳しく分析する必要があるんだよ」

 選手時代に遡ると、エメリは大成することができなかった。名門レアル・ソシエダの下部組織で育っているが、サンセ(Bチーム)どまり。天才肌の左利きアタッカーとして期待されるが、同じポジションで2歳下のハビエル・デ・ペドロが台頭し、あっという間に追い抜かされた。スペイン代表としてW杯にも出場したデ・ペドロとの競争は分が悪かった。結局、トップチームではプレーできていない。