長谷部誠、充実の今季を振り返る。「二兎を追ったことに意味がある」 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

「よく"二兎を追うものは一兎も得ず"と言うけれど、自分たちのなかでは、チャンピオンズリーグ(出場権獲得)もヨーロッパリーグ(優勝)も、両方追っていた。そのふたつを両方とも取ることはできなかった。だけどその二兎を追わないと、やっぱり感じられなかったことがあるんです」

 長谷部は今季の自分たちの戦いを振り返った。

「なかなか(そのふたつを)追えるチームというのはないし、自分たちみたいなチームが、これだけの選手層でそういうことにチャレンジした意味というのは、やはり考えなきゃいけない。そういう意味で、最後の7位でヨーロッパリーグ予選からというのは、それに挑戦したご褒美かなと感じます」

 EL準決勝でチェルシーに敗れた直後、長谷部は「チェルシーのほうが確実にいいチーム」と認めた。だが、そのチェルシーとの第2戦は、120分間で決着がつかずPK戦にまで持ち込む接戦となった。「自分たちにもできる」という大きな自信になったし、同時に、ビッグクラブでないからこその課題も感じた。

「(選手を)ローテーションするだけのクオリティ(選手層)が、正直、なかったっていうのは感じました。ELに関しては、スタジアムの雰囲気とかもあって、いいゲームができていたんですけど、そこにかけるパワーが強すぎて、リーグ戦になると少し、なんかこうパワーが出てこないというか......。そこはたぶん、自分たちの経験不足というか、ヨーロッパの舞台に常に立っているクラブ、選手たちには、おそらく何かがあるんでしょうね。それを今回、自分たちが戦ってみて肌で感じた部分があります。自分たちは、両方を戦い抜くクオリティがまだなかったのかなという感じはあります」
 
 長谷部個人としても、今季はめざましい活躍を見せた。リーグ戦では28試合にフル出場。出場しなかったのは、序盤のメンバーが流動的だった時期と、12月にケガをした直後だけだった。アドルフ・ヒュッター監督が、名前を挙げて長谷部を称えることもあった。

「個人的にも非常に充実したシーズンでした。ふたつの大きな目標を追いかけながら、前半戦の最後の1週間をケガで休んだだけで、ほぼフルで駆け抜けて、感じるものはすごく大きかった。満足まではしてないですけど、実りあるものでした」

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