決勝は「匂いの消えた」イングランド勢対決。連日のCL大逆転劇に思う (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 そこで先制点を奪い、通算スコアを3-0から4-0にしておけば、リバプールに大逆転負けを食らうことはなかったのだ。メッシという"偉人"に頼るサッカーから脱却し、かつてのような集団としての魅力を発揮しない限り、右肩下がりは止まらないと見る。

 そのバルサが首位を独走したスペインリーグ。CL4連覇を逃したレアル・マドリードも、もたついている様子だ。ディエゴ・シメオネ率いるアトレティコ・マドリードも頭打ちの状態にある。

 UEFAリーグランキングは過去5年の成績の集計に基づくので、スペインが首位の座から今すぐ陥落することはないが、この状態が続けば、2013年にイングランドから奪還した首位の座を、再び明け渡すのは時間の問題になる。来季はイングランドとスペインのUEFAランキングを巡る攻防も見ものになる。

「勝つときは少々汚くても構わないが、敗れるときは美しく」と、生前こちらに語ってくれたのは、バルサの元監督で、アヤックスのCL3連覇に貢献したヨハン・クライフだった。アヤックスとバルサ。今回、「負けっぷり」という点で勝ったのはアヤックスだった。

 リバプールとの第2戦、バルサの選手たちが相手CKでボールから目を離し、ディボック・オリギに奪われた決勝ゴールは、明らかなボーンヘッドだった。美しいとは言えない終わり方だった。

 それに対して、アヤックスはまさに「惜しい」と言いたくなる負け方をした。ルーカス・モウラに逆転弾を奪われたのは、アディショナルタイムが時計上では終了した瞬間だった。その時、表示はプラス5分1秒を指していた。まさにワンプレーの差であった。

 アヤックスにとって痛手となったのは、試合直前に、左ウイングのダヴィド・ネレスが負傷でメンバーから外れたことだ。デンマーク代表のカスパー・ドルベリが急遽出場したが、ゲームに入り切れないまま、途中交代でピッチを去ることになった。

 交代で出場した選手も、スパーズに比べ、インパクトに欠けた。スタメンの11人では互角以上だったかもしれないアヤックスだが、交代枠3人を含む14人での戦いで劣ったという印象だ。そこまで選手を揃えることができない、"金満"ではないクラブの悲しさを見た気がした。

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