アヤックスの快進撃がついにストップ。記憶に残る試合後の美しい拍手 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 1970年代と1990年代に黄金時代を築いた当時のアヤックスなら、どんな相手でも50・50(フィフティ・フィフティ)の立場で試合に挑めただろう。しかし、ボスマン判決と欧州サッカーバブルの影響もあって、メガクラブとアヤックスの資金力の差は開くばかりだ。今回のCLでベスト16に残ったチームのうち、予算が1億ユーロ(約122億円)に満たなかったのは、アヤックスだけである。

 オランダ国内では飛び抜けた財政力を誇るアヤックスでも、オランダ人は「今や欧州ではサブトップクラスに届くかどうかのクラブ」と冷静に見ている。

 そんなアヤックスの快進撃が、5月8日のCL準決勝でストップした。その負けっぷりは、14年前のPSV、AZと似通ったものがあった。

 2005年5月4日に行なわれたCL準決勝・第2戦、ミランをホームに招いたPSVは、朴智星(パク・チソン)とフィリップ・コクーのゴールで2-0とし、2試合合計を2-2とした。しかし後半アディショナルタイム、マッシモ・アンブロジーニがミランに貴重なアウェーゴールをもたらし、これが事実上の決勝ゴールとなった。その直後にコクーが鮮やかなボレーシュートを決めて3-1としたが、ファイナルの舞台に立つには不十分なスコアだった。

 その翌日、今度はAZがスポルティング・リスボンをホームに迎えて、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)準決勝・第2戦を行なった。AZは90分を2-1で終え、決着を延長戦に持ち込んだ。そして、延長9分にキュー・ヤリンスが待望のゴールを決め、決勝戦まであともう少しのところまで手が届く。ところが延長30分、コーナーキックから手痛いアウェーゴールを決められてしまった。

 話は戻って2019年5月8日、アヤックスは35分にMFハキム・ジエフのゴールで2-0とリードした。CLという世界最高峰の大会のベスト4相手にも、アヤックスは攻撃力を武器に倒そうとしていたのだ。しかも第1戦のアウェーゲーム、アヤックスは1-0で先勝していた。2試合合計3-0というスコアに、ファンが浮かれたのも仕方がない。「もうアヤックスのCL決勝進出は堅いだろう」と私も思った。

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