長谷部誠が明かす「ルーティンをコツコツ続ける」活力の源 (2ページ目)

  • 鈴木達朗●取材・文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

――そんな中村選手や中澤さんとは日本代表で共にプレーしていましたが、長谷部選手の代表での"集大成"となったロシアW杯では気になる場面がありました。決勝トーナメント進出を決めた、グループリーグ第3戦のポーランド戦後に「真実は結果の中にしかない」とコメントしたことです。その試合で物議を醸した後半の"ボール回し"の戦術について述べた言葉ですが、その真意を教えていただけますか?

「簡単に言い表せることではないですけどね。それまで喜怒哀楽、山あり谷ありのサッカー人生を歩んできて感じていたのは、やはりプロの勝負の世界は"結果がすべて"ということ。『美しい負け方』と言われる試合とか、いろんな経験を経て辿り着いた自分の答えが、"結果を出さないと、何も得られない"ということだったんです。

"何も得られない"というのは、またちょっと違うのかもしれないけど......。とにかくあの時の言葉は、自分の中の感覚で出てきたというか、誰かに伝えようとした言葉ではないんです。(0-1で)負けた試合後の言葉としては、人によっては偉そうにも聞こえたかな、とも思います。だけど、苦渋も味わってきた自分の経験から出た言葉なので。正直、自分に言い聞かせていた部分もあった気がします」

――ロシアW杯で日本代表からの引退を発表しましたが、フランクフルトではヨーロッパリーグでベスト4に進出し、タイトルを取るという"大きな結果"を出すチャンスが訪れています。昨季はドイツ杯のタイトルも獲得していますが、その優勝報告会でフランクフルト市庁舎から見た景色はいかがでしたか?

「あそこからの景色はなかなか見られるものではないし、最高に気持ちよかったです。まあ、前の日にほとんど寝られなかったので、寝不足だったんですけど(笑)。あの時のようにファンのみんなが心の底から喜んでくれることが、何より選手たちのモチベーションを高めてくれます。

 それはサッカーに限ったことではなくて、たとえば子供が生まれた時、社会人だったら何か成果を出せたときの喜びは何物にも代え難いと思います。僕もそういう喜びを得るために、日々の当たり前の作業やルーティンをコツコツやり続けている。『ああいう瞬間を何度でも味わいたい』という思いが、活力になっています」

――だいぶ先の話になると思いますが、そういった瞬間を指導者として、たとえば監督として迎えるビジョンはありますか? フランクフルトの同僚であるマルコ・ルス選手は、「僕はアシスタントコーチだったらやれるけど、監督は無理だ。でも、ハセなら似合うよ」と話していましたが。

「いやぁ、どうですかね(笑)。ルスには、選手としてのキャリアを終えてからのビジョンがあって、自分にはコーチが合っていると感じているんだろうけど。僕は、正直なところ具体的には決めきれてない部分がある。『まだ現役を頑張りたい』という思いが強いので、それをやりきってから考えたいと思います」

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