トレーナーも驚く長谷部誠の試合前のルーティン。「プロの鑑」 (4ページ目)

  • 鈴木達朗●取材・文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

 他ならぬ黒川も、スタッフの入れ替えが激しい欧州のサッカークラブのなかで"ベテラン"の域に入ってきている。フランクフルトで5年目を迎える黒川はチーム最古参のフィジオ。組織のことも熟知しており、選手にもっとも近いスタッフのひとりとして存在感が大きくなっている。そのため、「他のスタッフを引っ張っていかないといけないのかな」という自覚を口にする。

「(長く組織で活動するために)大切なのは、チームから求められていることに応じて、適切な振る舞いをすること。『繰り返し同じミスをしない』、『ここぞというときには、しっかりと結果を出す』ということじゃないかな、と思います。僕らの仕事は、1回1回の治療が勝負。気を抜くと選手が次の回から来なくなり、仕事が無くなっていきます。ちょっとしたマッサージのお願いでも常に全力でやり、選手の"第一選択の治療家"になりたいですね」

 一方で黒川は、フランクフルトでの現状に満足するつもりもないようだ。

「日本で頑張っていたからこそ、フランクフルトでチャンスをつかめたわけですから、ここでも頑張って"次の話"がきた時にはそれを逃さないようにしたいです。今はフランクフルトでやれていますが、まだまだだなと思っています。もし、"フランクフルト"という看板がなくなって、日本に帰らざるを得なくなってしまったら、何も残らないという危機感が常にあります。個人として、どれだけ勝負できるのか。その意識を忘れずにいようと思います」

 自身の診療所を閉めてまで挑戦した欧州サッカーの舞台。その実直さと"プレーヤーズファースト"の徹底で選手からの信頼を獲得し、クラブ内でのポジションを確立した。組織全体を見渡しながら適切な行動を取ることができる"真面目"な日本人の特徴を生かして、黒川はこれからも欧州でのチャンスをつかんでいくことだろう。

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