2019.03.06

たった1年で12倍以上の価値に。
冨安健洋の株が欧州で上昇中だ

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 冨安健洋がシント・トロイデンに移籍したのは、今から1年あまり前のことだった。「U-20日本代表のCB」という肩書こそあったが、当時シント・トロイデンのサポーターは「2部リーグ(アビスパ福岡)でプレーする19歳のCBに、80万ユーロ(約1億円)も払う価値があるのか」と懐疑的だったという。

 しかし、アジアカップの開催時期にチームを離脱した時期をのぞけば、今季開幕からずっとレギュラーとして試合に出続けている。その冨安には今や、1000万ユーロ(約12億7000万円)の価値があると言われている。

冨安健洋は安定した守備力を武器にシント・トロインデンで定位置を確保している デビューしたころの冨安は、相手をしっかり零封しても、「自分のプレーはまだまだです」と背中を丸めながら答えていた。

 私はマーク・ブレイス監督に、冨安の評価を訊いてみた。すると、「トミはベルギーで最高のタレントだ」と言い切った。驚く私に、指揮官は重ねて繰り返した。「間違いない。トミはベルギーで最高のタレントなんだよ」。

 日本代表のレギュラーになった今、試合後の冨安はさすがにもう背中を丸めることはなく、堂々と正面を見据えてインタビューに答えるようになった。それでも彼は、「僕のパスは改善が必要です」などと語り、反省と課題を繰り返している。

 地に足のついた青年――。それが、彼に対する私の印象である。

 2月24日、シント・トロイデンが3-1でシャルルロワを下した後、私はブレイス監督のもとに行った。そして、「半年前にあなたは、私に『トミはベルギーで最大のタレントだ』と言いました。あの時の冨安選手は、ベルギーではまだ何者でもなかった頃です。今季の冨安選手の成長を見ると、あなたが『冨安の発見者』だと感じます」と声をかけた。指揮官はニンマリと笑って、こう言った。

「私が発見したんじゃない。トミは、自分自身で成長していったんだ。今日のトミはパーフェクトじゃなかった。もう少し(右サイドのジョルダン・)ボタカとコミュニケーションを取ることができればよかった。だけど、いいパフォーマンスをしたよ。右サイドからの仕掛けを見たかい?」