スペインのレジェンド、イエロが指摘する「日本と強豪国の差」 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●文・撮影 text&photo by Kurita Shimei

――あらためて、W杯敗退の理由はどこにあると考えていますか?

「現代サッカーはチャンスで決めきれないと勝てない。さっきも言ったように、フィニッシュを決めきれなかったことがすべてだろうね。選手のコンデイションはよかったし、ロッカールームの雰囲気も情熱に満ちていた。メンバー的にも頂点を狙えるチームだったが、結果を見ると足りなかった部分があったのも事実だ」

――ロシアW杯で"サプライズ"だった国は?

「繰り返しになるけど、アジアのチームの躍進が印象に残っている。とくに日本と韓国は世界に大きなインパクトを与えた。ドイツ戦での韓国は試合終了までよく走り、よく守っていた。あれだけの闘志を持ったチームは観客の心を打つ。トットナムで活躍するソン・フンミンも常に脅威となっていた。世界中を見渡しても、W杯でドイツに2-0で勝てるクオリティを持つチームはあまりないだろうね。

 日本も組織化され、よく走るチームだった。ベルギー戦は残念だったね。オープンな展開で、ベルギーをギリギリまで追い詰めた戦いぶりはすばらしかった。ただ、厳しい言い方をすれば、(2点を先制した)あの試合展開であれば勝たないといけない。強豪国との差は、そういった試合運びやサッカーの理解力にあるということを再認識する結果だったんじゃないかな」

――話をスペインに戻します。現在のスペインサッカーは"ティキ・タカ"と呼ばれ、世界を席巻したスタイルからの脱却を図っているように映ります。

「サッカーのトレンドは短いスパンで変化していくもの。それに、もっとも大切なことは、チームが選手の特徴をどう生かすかだ。だから、このスタイルがいい、悪いといったような正解はない。ただ私に言えることは、ティキ・タカで圧倒的な強さを誇った時のスペイン代表にはシャビがいて、全盛期のアンドレス(・イニエスタ)がいた。特別なふたりの選手に加え、ダビド・ビジャというどこからでもゴールを狙えるフィニッシャーがいたからこそ成立した。

 ポゼッションを重視するべきか、堅守からのカウンターが正しいのかといった見方は、チームにいるメンバーによって異なる。当時のチームは特別な存在で、そのスタイルをそのまま今の代表に取り入れることは不可能ということだ」

――ひとつのサイクルがロシアW杯で終わり、4年後に向けて新たな才能達の台頭も待たれます。

「イスコ、マルコ・アセンシオ、アルバロ・オドリオソラといったロシアW杯メンバーは、4年後も主力としてチームを牽引するように育ってほしい。スペインには優れた育成環境があり、常に競争がある。私が見ている限りでも、才能溢れる選手たちが揃っている。彼らに必要なのは経験で、経験によって自信がつけば"化ける"選手が出てくるはずさ」

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