バルサのバルベルデ監督が見つけた「メッシ抜きで勝利するレシピ」 (2ページ目)
倉敷 マルチタスクをこなせるセルジ・ロベルトは小澤さんがおっしゃったようにスピードでも相手を苦しめていました。また、出場機会に恵まれずハングリーだったビダルは要求されたタスクにはなかったはずのゴールを狙うほどのモチベーションでピッチに入り、実際にゴールを決めてしまいました。彼はこれでユベントス、バイエルン、バルセロナという3つのクラブでレアル・マドリーからゴールを決めた選手になったわけです。中山さんはバルベルデの交代策についてどのような感想を持っていますか?
中山 後半開始からマドリーに押し込まれた際、その苦しい状況をバルベルデがどのように打開するかという点に注目して見ていましたが、見事にマドリーの勢いを止めて、自分たちの展開に持ち込みましたね。あの劣勢になった時間帯で、マドリーはゴールを決め切れませんでしたが、そのときはまだ1点リードしている状態でしたし、バルベルデは焦ってすぐに動くことなく、戦況を見ながら熟考していたと思います。
そして、マドリーに傾いていた流れを止めるための策として、まずセメドをサイドバックに入れてセルジ・ロベルトを前に出すという策でした。小澤さんがおっしゃったように、それによってバルサもセルジ・ロベルトを使いながらチャンスを作れるようになりましたし、マドリーの勢いが弱まりました。さらにその5分後、今度はデンベレをピッチに入れたわけですが、おそらくバルベルデはそこで勝負に出たのではないかと思います。
デンベレを入れるということは、カウンター狙いの意図があったはずですし、あの時間帯のマドリーは攻撃時にかなり人数をかけてイケイケの状態になっていましたから、絶好のタイミングでの選手交代でした。実際に3点目のゴールは、自陣でボールを奪った後に中盤でフリーになっていたデンベレにボールが入って、そこから彼がドリブルで前進して右サイドのセルジ・ロベルトにつないだところから生まれています。まさにバルベルデの描いていたとおりの展開になったのではないでしょうか。もちろん、ゴールを決めたスアレスのヘディングシュートもスーパーでしたが。
倉敷 すごかったですね。野生とか本能という言葉で形容したくなるスアレスらしいゴールでした。
中山 しかも、あのヘディングシュートはほとんど頭を振っていないというか、身体を反らしてから打ったヘディングシュートではなかったですからね。にもかかわらず、あの距離をあれだけ強いシュートで決めるとは、まさにスアレスならではのスーパーゴールだったと思います。セルジ・ロベルトのクロスボールの勢いを最大限利用したハイレベルなテクニックでしたが、何よりもあのスピードのクロスボールに対する反応が尋常ではないと思いました。
彼は昨シーズンのチャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマンに大逆転勝利を収めた試合の先制ゴールを決めましたが、あのときもひとりだけ異次元の反応をしてヘッドで決めていました。動物的と言ってもいいほどの反応の良さが彼の特長のひとつだとは思いますが、今回のヘディングシュートを見てあらためてそのことを痛感しました。
さらに言えば、ハットトリックにつながったスアレスの3点目のゴールシーンでは、GKが防げない高さに少しループ気味でシュートして、彼が持つ精密なシュート技術も見せてくれました。それも含めて、今回のクラシコではメッシがいないことによって、よりスアレスのストライカーとしてのレベルの高さがクローズアップされた印象があります。
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