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進撃のクロアチア。忖度しない
監督が注入した熱いスピリットで戦う (2ページ目)

  • ズドラフコ・レイチ●文 text by Zdravko Reic 利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 選手たちは彼と話をするだけで、プレッシャーが取り除かれるという。クロアチアのこれまでの成功は、選手の誰もがダリッチの采配を疑わず、自信を持ってプレーすることができたからだろう。ダリッチはクロアチア代表にチームワークとチームスピリットをもたらした。

 また、ダリッチは外野からの声に左右されない意志の強さを持っていた。彼はクロアチア代表監督としては初めて、スタッフを自ら選び、ロシアに連れて行く23人の選手を自分の決断で選出した。驚くべきことだが、彼以前の監督たちは皆、ディナモ・ザグレブのような国内の強豪チームの言いなりで、彼らの意思を忖度(そんたく)してチーム作りをしていたのだ。

 ダリッチの英断を物語るエピソードがある。W杯を目前に控えて、ダリッチはFWニコラ・カリニッチが不満を抱えていることに気がついた。カリニッチは自分が1トップのレギュラーとしてプレーできると信じていたのだが、ダリッチがそのポジションを与えたのはマリオ・マンジュキッチだった。

 W杯前のブラジルとの親善試合で、カリニッチは最後の20分間をプレーするように命じられたのに、「背中が痛い」という理由でそれを拒否した。同じことはW杯第1戦のナイジェリア戦でも繰り返された。

 ダリッチはカリニッチを代表から外す決意をした。すでに大会が始まっているのに、主力選手を、秩序を乱すという理由でチームから追放するのは、クロアチアサッカー史上初めてのことだ。W杯史上でも極めて珍しい。チームの和を何よりも重要視するダリッチの哲学がよく表れた出来事で、多くの選手が監督の決断を支持した。選手たちから見ても、カリニッチはチームの和を乱す存在だったのだ。

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