1人で全得点も、ポルトガルはC・ロナウドのワンマンチームにあらず (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 そのモロッコ戦。ポルトガルの試合内容はよくなかった。開始4分。ショートコーナーから、C・ロナウドがヘッドで叩き込んだまではよかった。しかし、それ以降は、勝ち点3が目の前にぶら下がった状態にあるためか、本来の魅力を出すことができなかった。歯車は残りの80分以上、狂いっぱなしだった。

 それでも、ポルトガルの評価が下がることはない。危ない橋をきわどく渡りながら勝ち進んでいったユーロ2016の戦いぶりを見ているからだ。

 さらに言えば、相手のモロッコが強かった。こちらは初戦でイランにオウンゴールを決勝点とされ、0-1で敗れていた。ポルトガルに敗れれば、その瞬間、大会2戦目にして早くもグループリーグ落ちが決まる。モロッコにとっては絶対に負けられない戦いだったのだ。

 早々と先制ゴールを決めたばかりに、ポルトガルはそれを受けて立つことになった。GKルイ・パトリシオは少なくとも、決定的なセーブを2本見せている。終了間際にハキム・ツィエクのシュートを、身を挺してブロックしたセンターバック、ジョゼ・フォンテの好守も光った。

 好印象を残しながら、モロッコはグループリーグ敗退が決まった。悪くない終わり方をした。A組でこの日、ロシアに敗れ、同様にグループリーグ敗退が決まったエジプトもそうだが、北アフリカ系のサッカーのレベルは上がっている。アフリカ全体のレベルが頭打ちの状態にあるなかで、この地区は例外だ。見ていて面白い。プレーが熱い。それでいて、思いのほか暴れない。今回で言えば、イランもこれに近いサッカーを見せているが、アジア勢に乏しいエネルギッシュな魅力がある。

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