欧州サッカーで増えた大量ゴール。誘発する「ストーミング」とは? (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

・今季のCLは、史上最多のゴールが決まっている。準決勝までの124試合で397点。1試合当たり平均3.2点だ。これまでの最多記録は昨シーズンのものだったから、得点増の傾向が急激に強まっていることがわかる。

・過去8シーズンのCLの準々決勝以降の104試合で、3点以上の差がついた試合は21試合あった。その前の8シーズンは、合計でわずか8試合だ。

・昨シーズンのCLについてUEFAが発表したリポートでは、ゴールが決まる前のボールポゼッションの平均時間は10.62秒だった。わずか2年前の2014~15シーズンに比べて8%も減っている。UEFAのリポートにあるように、「手数をかけずに攻撃に転じるトレンド」が加速している証拠だろう。

・プレミアリーグでも、得点増の傾向ははっきりしている。1992~2009年には、1試合の平均得点が2.7点を上回ったシーズンは1年しかなかった(1999-2000シーズンの2.79点)。ところが2009~10シーズン以降は、逆に2.7点を下回ったシーズンが1年しかない。

 いったい何が起きているのだろう?

 もちろん、プレッシング自体は新しいものではない。1970年代にも、リーズからオランダ代表まで、まったく個性の違うチームがこの戦術を採用していた。

 ドイツのチームはフィットネスがすばらしかったから、頻繁にプレーのペースを上げて、DFやMFが相手FWにプレッシャーをかけていた。相手にリードを許した直後には、特にこうしたプレーが多かった。

 1986年のワールドカップでは、ソ連がストーミングの初期の形をいち早く取り入れ、1次リーグでハンガリーに6-0というスコアで大勝した。ソ連は1~2分にわたり猛烈な勢いで攻めて点を取り、その後しばらくはDFの間でボールをゆっくり回して休んでいた。選手のフィットネスがそれほど高くなかった時代には、休憩をとることが必要だった。しかも、このワールドカップは暑いメキシコで行なわれていた。

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