西野新監督も「ずっと見ていた」。吉田麻也、プレミア残留に体を張る (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 これで勢いに乗ったと思いきや、しかし前半のアディショナルタイムにマークのズレから失点――。極端なゴール欠乏症に悩むサウサンプトンに嫌なムードが立ち込める。

 普段ならこのままズルズルと引き分けてしまうサウサンプトンだが、2部降格の危機に瀕(ひん)しているこの日は違った。後半開始から9分後にタディッチが加点し、ふたたびリードを奪うことに成功したのだ。

 すると吉田は、両手を胸に当てたまま、下を向いてしばらく動かなかった。神様に祈りを捧げているようにも見えたその仕草から、この試合にかける強い思いが伝わってきた。

 ここから日本代表DFは、ボーンマスの猛攻を跳ね返し続けた。76分には元イングランド代表FWジャーメイン・デフォーに入ったパスを身体を張ってブロック。相手のロングボールも渾身のヘッドでクリアし続けた。DFラインの上げ下げを指示しながら、時に味方を大声で鼓舞して最終ラインをひとつに束ねた。

 そして、試合終了――。激闘の末にサウサンプトンは勝ち点3を掴み、同日にチェルシーに敗れた17位スウォンジーとの勝ち点差を「1」に縮めた。試合後、吉田は語る。

「しんどかった(苦笑)。でもまあ、残留争いってそういうものだから。とりあえずここで勝ち点(3)を取れたのは大きい。スウォンジーは負けているし、次のエバートンで勝ち点が取れたらさらにいい。(5月8日の)スウォンジー戦では必ず勝ち点3を取らなければいけない。(記者:勝利でチームの雰囲気は好転する?)変わると思います。スタジアムの雰囲気も変わったし、この流れでいきたいなと思います」

 吉田の奮闘は、この試合の視察に訪れた日本代表の西野朗監督にとっても心強かったに違いない。

 左ひざ内側側副じん帯損傷のケガから実戦復帰し、ボーンマス戦で公式戦5試合目。「映像では確認していますけど、実際どういう状態でやっているのかを確認したい」と試合前に語っていた西野監督は、吉田のプレーを「ずっとフォーカスして見ていました」と言う。

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