プーチンはロシアW杯を「さっさと終わらせてしまおう」と考えている

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】W杯開催国ロシアのいま(前編)

W杯組み合わせ抽選会に出席したロシアのプーチン大統領(右)とインファンティノFIFA会長 photo by AP/AFLOW杯組み合わせ抽選会に出席したロシアのプーチン大統領(右)とインファンティノFIFA会長 photo by AP/AFLO 多くのロシア人と同じく、ウラジーミル・プーチン大統領はフットボールファンではない。だが2009年、彼は2018年のワールドカップ開催国にロシアが立候補すべきだと考えた。

 ワールドカップ・イヤーが幕を開けた今、プーチンは大会を招致しなければよかったと思っているかもしれない。「ロシア政府から感じられるのは『さっさと終わらせてしまおう』という空気だ」と、ローザンヌ大学(スイス)でロシアのスポーツ政治を研究するスベン・ダニエル・ウルフは言う。

 大会招致に動きはじめたころのロシアは、今とは違う国のようだった。2008年、僕はチェルシー対マンチェスター・ユナイテッドのチャンピオンズリーグ決勝を見るためにモスクワへ飛んだ。このときは試合のチケットを持っていれば、ビザなしで入国できた。ロシアにまともな出入国審査が生まれてから初めてのことだろう。

 美しく改装されたモスクワのドモジェドボ国際空港では、税関を一瞬で通過できた。アメリカに入国するときより、はるかにスムーズだった。モスクワのレストランはどこもいっぱいで、その週は株式市場が史上最高値をつけた。

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