W杯目前で散った北アイルランドに見る、厳しくも奥深い欧州サッカー (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 しかし、試合内容はスイスが優勢だったのもまた事実。スイスは予選グループを9連勝で勝ち進みながら、最終戦でポルトガルに喫したただひとつの敗戦によって、出場権をその相手に譲っていた。

 当然、このプレーオフでも"最強の敗者"を有利と見る向きは多かった。しかもスイスは、この試合を前にホームゲーム9連勝と、地元での圧倒的な強さを誇っていた。確かに微妙なPKではあったが、両者の力の差を考えれば、最終的な勝敗において大きな意味を持つことはないだろう。それが大方の予想だった。

 ところが、試合は意外な展開を見せた。

 スイスが立ち上がりからボールを支配して攻め続けるものの、なかなか決定機を作り出せない。強引に持ち込んでシュートを放っても、ことごとくDFにブロックされてしまう。

 朝から断続的に降り続く雨でぬかるんだピッチに、思うようにパスをつなげないスイス。対する北アイルランドは、重馬場にも運動量がまったく落ちず、白いユニフォームを泥だらけにしながら激しくボールに寄せ、赤いユニフォームに体をぶつけた。

 すると、波に乗れないスイスがイージーミスを増やし、次第に試合の流れはカウンターで反撃に転じる北アイルランドへ。後半に入ると、さらにその流れは加速し、一方的と言っていいほどに北アイルランドが次々とスイスゴールへ迫った。

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