伝説の30m弾から15年。ルーニーとエバートンの、ほっこりする話 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 ゴールまでの距離は30メートル近くもあり、しかもファーストタッチとシュート体勢に入るまでの身のこなしだけを見ても、その少年がただ者ではないことは明らかだった。

「Remember the name, Wayne Rooney!」とは、そのときの実況アナウンサーがゴール直後に叫んだ名台詞だ。これはのちにルーニーの公式サイトのタイトルになるほど有名なフレーズになったが、当時無敵のアーセナルが更新していたリーグ30戦無敗という記録をストップさせたそのゴールこそ、ルーニー伝説の幕開けだったと言っても過言ではない。

 もっとも、その伝説が始まるまでに多くの時間を要しなかったこと自体が、ルーニー伝説のひとつと言えるのかもしれない。

 1985年10月24日、リバプールに生まれたルーニーは、グディソン・パークから5kmほどの距離にある公営住宅で育った。近所では両親とふたりの弟ともども熱狂的なエバトニアン一家として知られ、「生後半年にはウェインをエバートン戦に連れていった」と、のちに父親が振り返っているほど。

 そんなウェイン少年は自然とボールを蹴り始めると、すぐに類稀(たぐいまれ)なる才能を見せ始め、9歳にして自宅から1.5kmほどの距離にあったエバートンのアカデミーに入団した。当然、その才能にはお隣のライバルチーム、リバプールも目を光らせていたが、リバプールの練習に招待されたウェイン少年は愛するブルーのユニフォームを着てプレーしたというから、もはやエバートン入りは誰にも変えようがない宿命とも言えた。

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