未踏のルートを拓く男。田中亜土夢がフィンランドで戦い続ける理由

  • 高橋アオ●文 text by Takahashi Ao
  • photo by Jussi Eskola courtesy of HJK

 現在のサッカー界では、日本人選手の海外移籍が日常的に行なわれているが、そのなかでも欧州の強豪国に比べてFIFAランキングが下位の国や競技力が低いとされる国で、人知れずプレーしている日本人選手を「ひっそり海外組」と称することがある。たとえば、ルーマニアで活躍している瀬戸貴幸(1部アストラ・ジュルジュ)はJリーグを経由せずに、海外でプロデビューを果たし、チャンピオンズリーグ予選やヨーロッパリーグで活躍するまでになった。
 
 瀬戸のように「ひっそり海外組」と呼ばれる選手たちは、日本で活躍したことがないケースが大半だ。しかし、やや事情が異なる選手もいる。J1アルビレックス新潟で200試合出場の実績を持つ田中亜土夢は、海外でのプレーを決断したときにフィンランドを新天地に選んだ。そして今、彼はHJKヘルシンキの中心選手として2季連続リーグベストイレブンに選出され、チームにとって必要不可欠な存在となっている。なぜ、田中はフィンランドで挑戦するのか。
2季連続でリーグのベストイレブンに輝いた田中亜土夢 photo by Jussi Eskola courtesy of HJK2季連続でリーグのベストイレブンに輝いた田中亜土夢 photo by Jussi Eskola courtesy of HJK 7月28日のヨーロッパリーグ(EL)予選3回戦IFKイェーテボリ戦で、田中は右腓骨(ひこつ)を骨折。このケガにより、以降はピッチに復帰することなくシーズンを終えた。治療とリハビリのために日本へ帰国した彼は、今季をこう振り返る。

「まず、よかったところは、ケガする前までは自分のプレーができていたこと。2年目なので、フィンランドリーグのこともわかってきたし、メンバーもスタメンの3~4人以外はほとんどが入れ替わり、そういう部分で僕が中心になって攻撃面をしっかりやらないといけないと感じていました。

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