清武は不在も好調のセビージャが「リーガ4強時代」の幕を開けるか (3ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by AFLO

 ミッドウィークのディナモ・ザグレブ戦では、大きくスケールアップしたナスリの姿があった。これまでは仕掛けや最終局面のプレーに長けたアタッカーのイメージが強かったが、アルゼンチン人指揮官はボランチとしての素養も見出しているようで、本人もその期待に応えている。

 チームメイトからも全幅の信頼を寄せられ、顔を出せば必ずパスが回ってくる。群を抜くキープ力で中盤に時間をつくり、的確な配球で試合をコントロールし(パス数はダントツの146)、常に周囲に指示を出し続ける姿はピッチ上の指揮官そのもの。その上、持ち前の攻撃性能を最適なタイミングで発揮する。得点シーンは味方とのパス交換の後に猛然とボックス内に駆け上がって、濡れたピッチに滑るクロスを高度な技術で難なく仕留めたものだ。

「ナスリは自身の価値を証明しているね。彼は今、キャリア最高の時を過ごしている」と試合後にサンパオリ監督は喜んだ。かつてはトラブルメーカーの側面を見せることもあったが、セビージャでは指揮官の好むハードワーカーに徹しており、パスを出したりボールを取られたりした直後にも説得力のあるプレーを見せる。もちろんコミュニケーションの部分でも清武を大きくリードしている。

 おそらく大きな怪我でもないかぎり、今季のセビージャはナスリを軸に回っていくはずだ。そう考えると、清武はこの背番号10とポジションを争うのではなく、共存の道を模索すべきかもしれない。ただし、ビトーロやフランコ・バスケスといったライバルも強力だし、何より好調のチームはいじらないのがこのスポーツのセオリーだ。となれば、今週の大一番を含め、清武には我慢の日々が続きそうだ。

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