CL決勝は負けてなお強し。闘将シメオネとアトレティコの確かな成長 (5ページ目)
それにしても、シメオネはいいチームを作った。
2年前のアトレティコは、レアルやバルサといったクラブに比べ、選手個々の技術では劣る分、ハードワークでカバーしていた。と同時に、徹底した守備意識や球際での争いで負けない気持ちの強さを求め、戦う集団を作り上げた。
しかし、現在のアトレティコは間違いなく2年前よりもワンランク上のサッカーをしている。ハードワークをいとわない、泥臭く戦う姿勢がベースにあるのは今も変わりはないが、そこに華麗さや美しさといった要素も少なからず加わっている。
もはや「堅守速攻のアンダードッグ」というレベルのサッカーではない。
失礼ながら、かつてはずる賢く、人を苛立たせる天才だった指揮官が作ったチームとは思えない。人心掌握に長けた闘将は、選手はもちろん、サポーターの心までもがっちりとつかみ、文字通り、全員で一緒に戦っている。
「3年で2度の決勝進出はすばらしい成果だ。しかし、その結果はうれしいものではない」
CLの決勝後であろうといつもと変わらず、シメオネは淡々とそう語った。表情から読み取るのは難しいが、発する言葉には誇らしさと悔しさが複雑に入り混じる。
2度目の今年は、1度目よりも間違いなく強いチームを作って決勝に臨むことができた。そんな自負が、逆に悔しさを増幅させるのかもしれない。
果たしてシメオネに、そしてアトレティコに、3度目の正直を成し遂げる機会は訪れるのだろうか。
シメオネとアトレティコの成長物語を、もう少し見続けていたいものである。
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