さらばハノーファー。酒井宏樹が語った降格チームへの思いとこれから
奇妙な光景だった。ハノーファーのスタジアムに隣接されたファンショップで、酒井宏樹が自ら所属するクラブのグッズを買い求めていた。見つからない商品の場所を訊ねられた店員は、驚いた表情を浮かべた。別のところで作業していた店員や買い物中のファンも酒井に気付き、記念撮影を求めにやってくる。酒井がすっかりハノーファーの人々から認知されたことがうかがえるシーンだった。
4シーズンにわたりハノーファーでプレーした酒井宏樹 シーズン最終戦を週末に控えた火曜日、酒井宏樹に話を聞くためにハノーファーの練習場を訪れた。しかし、負傷中で前節のメンバーから外れた酒井はグラウンドで行なわれているチーム練習には参加せず、スタジアム内の施設で治療と個別メニューをこなしただけで練習場を後にした。
取材を諦めて帰路に就こうとしたとき、ファンショップに入っていく酒井の姿を目にして後を追った。買い物中の酒井に迷惑を承知で声を掛けると、「買い物中でもいいんですか?」と快諾してくれた。これまでにもハノーファーの練習場には何度も足を運んだが、酒井はそのたびに丁寧に話を聞かせてくれた。
「親にグッズを頼まれているんですよ。今年で契約が切れるので」
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