2016.03.07

エイバル乾貴士に立ちはだかる壁。バルサに「何もできず」大敗

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 スペインの北、バスク地方の小さな町。エイバルの広場には大勢の人々が集まり、パエージャやチョリソをつまみながら、ビールや白ワインでしたたかに酔い、爛々と目を輝かせていた。チーム予算で30倍近い無敵王者バルサを迎え、どこまで戦えるのか。冷たい雨が降り続けていたが、その熱気は湯気が立ちそうなほどだった。

「乾のプレーを愛しているよ。彼がボールを持つと、何かが起こる予感がある。今日もいい仕事をやってくれるといいね!」

 ワインを片手にした男たちが、赤らんだ顔で言った。聞いていてこそばゆくなるほどに、日本人サッカー選手、乾貴士はエイバルの人々に愛されていた。

バルセロナ戦をベンチで見つめる乾貴士。出場は後半45分からだった リーグ開幕直後、乾はエイバルでは4、5番手のサイドアタッカーにすぎなかった。しかし試合に出るたび、着実に評価を高めた。年明けのエスパニョール戦で初得点を記録し、チームに勝利をもたらすと先発出場の機会も多くなり、2番手から3番手のサイドアタッカーになった。冬のマーケットで放出された選手がいることを考えれば、一つのハードルを越えたと言えるだろう。

 2月20日のアウエーのセルタ戦では先発フル出場を果たし、3得点目を挙げると、一躍ヒーローとなった。存分にボールスキルの高さを見せつけ、乾の先発は確約されたようにも見えた。