「イ・イ・イヌイ」の歌。連続ゴールの乾貴士とエイバルの幸福な関係 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 前半終了間際、乾はFKのチャンスで大きくボールをふかしてしまったが、それでもエイバルサポーターからは大きな拍手が送られ、これまで聞いたことのない"イ・イ・イヌイ"というチャントがゴール裏から歌われた。

 リーガで成功を収める上で大事な要素に、いかに周囲を味方につけることができるか、がある。特に外国籍選手はチームを勝利に導くための助っ人であり、それにふさわしいパフォーマンスを見せることができないと、本来は味方であるはずのサポーターから辛辣(しんらつ)な評価を受け、ただボールがその選手に回るだけでブーイングが飛ぶという厳しい状況に追い込まれることがある。

 乾はそのことを誰よりもわかっているのだろう。ブンデスリーガ時代の彼のことはよくわからないが、スタンドやメディアとの関係が、今、エイバルで享受しているような関係ではなかったことは容易に推測できる。

「スタジアムの雰囲気はもとからいい。ブーイングなんてまったくない。本当にやりやすい環境で自分自身やれている」と、乾は人口わずか27000人の小さな地方の町のクラブでプレーすることの喜びをかみしめている。

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