クロップ監督退任を淡々と受け止めた香川真司の心の奥 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Watanabe Koji

 あっさりと割り切っているのか、懸命に割り切ろうとしているのか。あるいは聞き手のこちらのほうが感情的になり過ぎているのだろうか。

「実感がないというか、余韻にひたっている余裕がないというか......」

 確かに余裕がない、というフレーズが一番しっくりくるのかもしれない。言葉にすることはなかったが、香川は試合中、いつもと違う表情を見せていた。

 この日、香川はだめ押しとなる3点目を決めた。リーグ戦では今季3点目、ホームでの得点は復帰戦以来となる。得点の形も、これまでの2点に比べれば格段に香川のスキルによるところが大きかった。ミキタリアンのロングボールに抜け出し、ディフェンダーの前に巧みに入り込み、GKの動きを見切って左足で流し込んだ。

 香川はゴール前に入ったスピードに乗ったまま、スタンド方向に走りながら、何度も拳を握りしめた。ガッツポーズではあるが、悔しさを押し殺しているようでもあった。その顔は嬉しいというより、今にも泣き出しそうな、あるいは情けなさを噛み締めているような、眉間に力の入ったものだった。

「まあまだまだ物足りないです。特にホームでは今シーズンまだ2点目ですし、悔しい気持ちがいっぱいなので、喜んでる場合ではない。やっぱり2点、3点と取り続けていくかことが一番かなと思います」

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