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今や巨大なコミュニティー。サッカーをテレビ観戦する人々

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】テレビの時代のサッカー(前編)

 アメリカの大学の寮で、西アフリカの国のフライドチキン屋で、シリアの民兵訓練キャンプで、彼らは毎日のように集まっている。彼らは「フットボールをテレビ観戦するファン」というグローバルなコミュニティーだ。

 時には彼らのアイデンティティーのなかで、フットボールファンであることが最も重要な場合がある。フェイスブックで自分のことをチェルシーのファン(あくまで例えばだけど)だと言う人は大変な数にのぼる。掘っ立て小屋に住んでいても、チェルシーを応援することで彼らは「ワールドクラス」なものにつながっていると感じられる。

今やプレミアリーグの試合にテレビカメラは不可欠(photo by Getty Images)今やプレミアリーグの試合にテレビカメラは不可欠(photo by Getty Images) フットボールの世界では、テレビで試合を見るファンはただの「消費者」と言われることが多い。実際にスタジアムへ出かけるファンのように熱くなく、「本物」ではないという位置づけだ。まだフットボール界には、「本物のファン」という時代遅れの概念がはびこっている。典型的なイメージは、幼いときに父親に連れていかれた試合でどこかのクラブにはまり、今もシーズンチケットを買いつづけているヨーロッパ人男性だ。

 しかしテレビでフットボールを見るファンは、いま過去最高の数にのぼり、世界的にもこれまでにない広がりを持ち、そして互いに結びつくようになっている。彼らはただ、家のソファでテレビを見ているだけではない。試合を見ながら感じたことや考えたこと、あるいはジョークをソーシャルメディアで交換している。

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