アトレティコCLベスト8。復帰のトーレスを震わせた歓声

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ビセンテ・カルデロン(マドリード)で行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第2戦、アトレティコ・マドリード対バイヤー・レバークーゼンの一戦は、ホームチームがMFマリオ・スアレスのゴールにより1対0で勝利した。これによって2戦合計1対1のタイスコアとなり、延長、そしてPK戦に突入。両チーム5人目のキッカーが明暗を分け、3対2としたアトレティコ・マドリードがベスト8進出を決めた。

フェルナンド・トーレスを送り出すシメオネ監督フェルナンド・トーレスを送り出すシメオネ監督 先週までの穏やかな春の陽気が嘘のように寒さがぶり返したマドリード。携帯電話に映し出された気温の数字は0度。冷たい横風により体感温度はさらに下がり、サッカー観戦に適しているとは言えない真冬へ逆戻りしたような天候のもとで行なわれた一戦だったが、ビセンテ・カルデロンはチームの勝利を信じるサポーターたちの熱気に包まれていた。

 120分を通して生まれたゴールはわずかに1点。しかもマリオ・スアレスの放ったミドルシュートは、相手DFに当たり軌道を変えてGKを欺(あざむ)いたもの。勝利への強い意志こそ感じられたが、美しさとはかけ離れたものであり、勝利したアトレティコファン以外でこの試合にスペクタクルを感じた者は少ないだろう。

 だが、スペクタクルだけがサッカーの楽しさではないはずだ。負ければ大会敗退のトーナメント戦だから起こりえる緊張感や1点を巡る激しいせめぎ合い、手に汗握る死闘がこの試合には確かにあった。そして、その死闘を色付けしたのはピッチの中の選手たちだけでない。愛するチームの勝利を信じている両チームのサポーターの存在があってのものだった。

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