出場増えたスポルティング田中順也。「ジワジワいく」 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 この得点の直後、田中はFWモンテーロに代わりピッチに立った。結果としては5分弱の短い出場時間だった。とはいえ田中は「与えられた時間で結果を残すのが選手の役割だと思っている」と、監督から与えられた任務を遂行し、チームの力になることを目指した。

 だが結局、ワントップの位置に入った田中にボールが回ることは皆無だった。負ければスポルティングとの勝ち点差が4に、2位ポルトとの勝ち点差が3となるベンフィカが、突如牙をむいてホームチームに襲いかかったのだ。

 そしてラストプレイ。エリア内の混戦からベンフィカのFWジャウデルが右足を豪快に振り抜くと、ボールはネットを揺らした。スポルティングにとって、シナリオは最悪の結末に変えられてしまった。

「今日、勝てば4差だったので、最後は言葉にできないほど悔しい。もう他力でしか優勝することができないし、ベンフィカが崩れてくれることを願うしかない。4差ならまだね......思い切り崩れてくれないとなかなか縮まらない差(7差)になったので、本当に悔しい」

 プレシーズンでチーム得点王と結果を出しながらも、開幕直後から招集外となり、苦渋の日々を強いられたチームに対して、愛情などないのではないかと邪推をしていたが、日本人FWのスポルティングに対する思いは逆に強いものだった。このチームで成功したいという強い意志がその言葉からは感じられた。

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