2015.02.14

復活の兆し。香川真司にスタンディングオベーション

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 試合前の選手紹介。場内アナウンスが、いつものように観客をあおりながら各選手を紹介していく。アナウンサーはたいていファーストネームを呼び、スタンドがファミリーネームで応える、いわばコールアンドレスポンスのような形だ。

 ドルトムントの場合、スタンドが最も盛り上がるのは選手の名前が呼ばれた時ではなく、選手が紹介され終わってからクロップ監督が呼ばれる時だ。クロップの求心力と人気を感じさせる。だが、2月14日のマインツ戦、スタジアムアナウンサーが特別大きな間をあけて静寂を呼び込み、そしてスタンドの爆発を誘ったのはマルコ・ロイスだった。

マインツ戦に先発出場した香川真司 マインツ戦を前にした2月10日、ロイスはドルトムントとの2019年夏までの契約延長にサインをした。昨年は負傷がちで、ブラジルW杯出場を逃すなど不運に見舞われたが、ポテンシャルも市場評価も高い彼に移籍の噂は絶えなかった。ロイスが契約を延長した背景には、クラブが大型スポンサーを獲得したことで高額提示が可能になったこともある。それでもツォルクSD(スポーツ・ディレクター)が「彼はどこにでも移籍できた」と言うほど、ビッグクラブから好条件の話があったようだ。

 それほどの選手だけに、ドルトムントにとっても簡単には手放せない存在だ。一時は最下位にまで落ちた危機的なシーズンに移籍を許したとなれば、サポーターたちへのショックは計り知れない。ロイス本人にしてみれば、"もっと欧州のトップクラブで高サラリーを得ることもできる""こんな不安定なクラブに長居する必要はない"と思っても不思議ではない。だが、ロイスはドルトムントを選んだ。