国民の「サッカー力」が上がらなければ日本代表は強くならない

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

小宮良之のブラジル蹴球紀行(最終回)

 ブラジルW杯決勝の翌日、リオデジャネイロにあるコパカバーナのビーチ。前日までの騒ぎが幻だったかのように収まり、祭りの後を匂わせた。お隣の国から大挙押し寄せたアルゼンチン人が、決勝で負けておとなしくなったことも大きかったかもしれない。

「20~30万のアルゼンチン人が母国の代表を応援するためにやってきた。大半がチケットも持たずにね。俺もその一人さ。忠実なHincha(サポーター)がいることを誇りに思うよ」

 砂浜でサッカーボールを蹴っていた20代半ばのアルゼンチン人青年、アンヘル君は言った。心からアルゼンチンを愛しているようだったが、偏愛ではない。

ブラジルに大挙押し寄せていたアルゼンチンのファンブラジルに大挙押し寄せていたアルゼンチンのファン「メッシは俺たちの英雄だ。でも、ドイツ戦は単発的にしかいいプレイができなかった。残念だね。パラシオは正直、失望だった。彼はいい選手なんだけど、いつも順応するのに時間が掛かる。GKのロメロはオランダ戦のPK戦は素晴らしかった。アルゼンチンの救世主さ。けど、全体的にプレイは不安定で、大会最高のGKはノイヤーだね」

 アンヘル君はフットボールを批評するたしかな目を持ち、自己批判も忘れていなかった。メッシ、ディマリアと同じサンタフェ州出身だという彼は、地方クラブで12歳まではプロを目指していたが、実力不足を痛感してその道を諦めた。しかしフットボールは好きなままだという。

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