トップ下も経験。大迫勇也はドイツ2部で何を得たのか (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by Getty Images

 だが、その「気遣い」と「試行錯誤」によって事態は悪化した。攻撃の組み立てに参加しようとポジションを下げてもなかなかボールをもらえない。ボールに触るのは後方から蹴り込まれるロングボールを競りに行った時だけ。ボールに触れなければ自分もリズムに乗ることはできない。なかなかプレイに絡めない大迫は、ポジションを下げたまま肝心の場面でゴール前を留守にすることもあった。

 だが大迫に変化のきっかけが訪れる。チームを引き継いだフォン・アーレン監督が、第31節ビーレフェルト戦の後半から、大迫のポジションをトップ下に移した。監督からの要望は、中盤の高い位置でボールを受けてタメを作り、そこからボールを前に入れてほしいというもので、大迫はそれを忠実にこなした。

 それだけはなく、トップ下でプレイすることは、大迫に新たなプレイの幅をもたらした。ボールを捌いてからゴール前に飛び込めば、前を向いた状態で空いたスペースに入っていくことができた。本職ではないためどこかぎこちなさは否めなかったが、チームは高い位置に起点を作ることができ、何よりボールに触ることで大迫自身、リズムに乗れるようになった。

「トップ下をやってボールに触れるようになった。やっぱりボールに触らないとリズムを作れないですし、そういうイメージっていうのが一番大事」

 そして第32節、2位フュルトとの試合では7試合ぶりのゴールを記録。イメージ通りと振り返ったこのゴールは、エリアの外側を横切るようにドリブルで持ち込んでスムーズに左足を振り抜くことができた得点だった。

「決定力って、シュートを打つときに迷ったら負けだと思うから。そこが大事だと思う」

「気遣い」と「試行錯誤」によって生まれていた迷いは消えた。大迫は得点を奪うとよく「イメージ通り」と口にするが、それはボールを受ける前から、どこにトラップしてDFをかわし、どこにシュートを放つかという一連の動きをあらかじめイメージできているということだ。ボールを受ける前にそのイメージを描けていれば、あとはその通りにプレイするだけだ。

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