デビュー戦でゴール!大迫勇也がドイツ2部に来た理由 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by GettyImages

 だが大迫はこの日、それをしなかった。前半終了時の大迫の走行距離はチームで下から3番目、ボールタッチ数もフィールドプレイヤ―の中で最少だった。後半に入ると少し運動量は増えたものの、プレイに絡む機会は結局増えなかった。前半に一度決定機を迎えていたとはいえ、この出来を考慮すれば途中交代を命じられても仕方は無いだろう。60分過ぎに2人の交代選手がタッチライン際で準備を始めた時には大迫交代の可能性を否定することはできなかった。

 だが大迫はピッチに残った。大迫と2トップを組み、前半から献身的にボールに絡んでいたハインを下げ、フンケル監督は大迫の一発に望みを託した。そしてその直後に大迫は仕事をやってのける。エリア外からのシュートをGKがわずかに掴み損ねると、いち早く反応した大迫が右足で掻き出し、最後は左足で押し込んだ。

 大迫はずっとこの瞬間の狙っていたのかもしれない。ゴール前で仕事をするその瞬間を。前線を離れて攻撃の組み立てに参加すればチームの流れに乗ることはできるが、その分だけ体力は消耗するし、肝心のチャンスを万全の状態で迎えられない可能性が出てくる。ならば、回数は少なかろうと訪れるであろうチャンスの場面で最大限の力を発揮して得点を奪おうというのも、FWとしては「アリ」である。

 FWとは良くも悪くもゴールで評価される職業で、試合の大半で消えていようと、ゴールさえ奪ってしまえば十分なのだ。それでチームメイトや監督から「あいつなら決めてくれる」という信頼を得られれば、さらに自分がプレイしやすい環境も作り出せる。この日の大迫はゴール前で仕事をすることにこだわったのだ。

 とはいえ、チームは勝ち点3を得ることができなかった。試合後の大迫はその悔しさを隠せず、サポーターの元へ挨拶に行ってもガックリと腰に下ろした両手が上がることはなかった。それは既に大迫がチームの結果に対して責任を感じていたということでもあろう。だが、大迫にはもっと強く感じたことがあったはずだ。

 チームに加入して間もない頃、なかなか良い形でパスが出てこないことに対して大迫はこんなことを口にしていた。

「自分で何とかしないといけないなとは思うけど...でもそこは自分のレベルアップに繋がると思う」


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