ケルン入団の長澤和輝。ドイツ人は日本の大学サッカー選手をどう見たか (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburou/AFLO

 もっとも今のところ、そんな長澤に対する現地ファンの期待は大きくない。というより、長澤が一体どんな選手なのか、ほとんど分かっていないようだ。これまでドイツにやってきた日本人選手と違い、プロ経験の無い長澤を実績面から判断することはできない。ドイツでは大学のチームはプロ入りを目指す選手の集う場ではなく、そこからプロ選手になることは基本的に考えられない。もちろん日本の大学サッカーのレベルなど知る由もない。

 そのため、長澤が大学のチームからやってきたということがしっくりこないファンも多いのだ。日本サッカーについて多少知識のあるファンでさえ、指定強化選手として1試合プレイした横浜F・.マリノスから移籍してきたという勘違いをしているほどだ(実際、長澤の前所属チームをF・マリノスと表記しているメディアもある)。

 約700人のファンが集まった年明け最初の練習に、長澤は体調を崩して参加しなかった。そのプレイが多くのファンの目に触れる機会はもう少し先になりそうだ。だが昨年の11月下旬にケルンの練習に参加した長澤は、最終的にそのプレイでクラブを納得させて契約を勝ち取っている。当時、彼はほとんどの時間をトップチームとともに過ごしていた。

 練習参加期間も終わりに迫ったある日のことだ。練習は前日の試合に出場しなかったメンバーで行なわれ、最後はペナルティエリア程の大きさで3対3のミニゲームとなった。コートが小さく人数も少ないため、攻守が激しく入れ替わる体力的にキツい練習だ。だが、30分足らずの中で、長澤は自らの特徴を存分に発揮してみせた。大柄なケルンの選手たちの懐(ふところ)に入るようなドリブルを積極的に仕掛け、何度も決定機を作り出したのだ。

「あの中でああいう(ドリブルができる)個性を持っていたのは自分だけだったじゃないですか。そこの部分を出していかなきゃいけないなというのはあって、目の前に相手がいるからパスを回して、とやっていたら周りの選手と一緒だし、自分の個性を出したいな、アピールしたいな、という思いがありました。やっぱり一番直接のアピールに繋がるのは得点だと思いますし、それを狙っていたのは確かです」(長澤)

 専修大での長澤は、味方とのコンビネーションで相手を崩すのが得意な選手だっただけに、多少強引でもドリブルを仕掛けるその姿は意外だった。長澤自身、コンビプレイをしたいという思いはあったようだ。だが、短期間で味方との感覚を合わせることはできない。自分の意図を伝えようにもまだ言葉が喋れない。ならばアピールするためにはドリブルという方法しかなかった。

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