全試合出場中の酒井宏樹。「3強」との戦いで得たものは? (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by GettyImages

ドイツ杯2回戦 バイエルン戦 1-4(9月25日)
 
 バイエルンとの戦いでは、酒井は個人の能力の差も痛感した。リーグ戦で対戦した翌週、ハノーファーはカップ戦でバイエルンと再戦する。この試合ではバイエルンのミュラーが2得点の活躍を見せたが、そのうちの1点は、酒井のマークを外して奪ったものだ。

 FKに飛び込んできたミュラーは、酒井に体を寄せられ、ボールは両選手の前を通過するかに思えた。だが、ミュラーは倒れ込みながら足を延ばし、ボールの軌道を変えてネットを揺らしてみせた。「トップレベルの選手はああいうところでも足を伸ばして決めてくる。あの1点は、自分がもっと上にいけるかどうかのところだと思うので、もっともっと自分が変わらないといけない」と、酒井はそのプレイを分析した。

第9節 ドルトムント戦 0-1(10月19日)

 調子が悪い中でも勝てるのが強いチーム。この日のドルトムントはまさにそうだった。ドルトムントは試合開始とともに総攻撃を仕掛けてきた。左SBドゥルムがワンツーでエリア内に侵入すると、対応が一瞬遅れた酒井の腕が思わず伸びてPKの判定。リプレイで見ると酒井ほとんど触っていないが、相手の倒れ方がうまかった。

 この日のドルトムントは本調子からはほど遠かった。代表戦から帰った選手たちのコンディションは万全でなく、先制点を奪った後はミスを連発して苦しい試合展開になった。しかし、結局その一点を最後まで守り切って勝利。内容が悪くとも、勝ち点3であることに変わりはない。

 PKを獲得したドゥルムは今季下部組織からトップチームに上がってきたばかりの21歳。そんな若手選手が試合の流れを読み、相手が浮足立っている立ち上がりに効果的なプレイを仕掛けてくる。そんなところにもドルトムントのしたたかさを感じた。

 トップレベルとの差はわずかなズレや一瞬のスキにあった。だが、それらの差を縮めていくのはそう簡単なものではない。最後の1%を詰めていく作業は、それまでの10%を埋める作業よりも難しい。

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