ユベントス会長「イタリアは一流選手の最終目的地ではなくなった」 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 アニエリはイングランドの試合で掲出されている広告ボードにも羨望の目を向ける。「プレミアリーグのほとんどのスタジアムに中国語の広告が出ている。私たちも多国籍企業にはアプローチしているが、イタリアの支社が自由にできる予算には限界がある。本社とちゃんと話がしたい」

 フットボールの世界では、金が成功をもたらす。「イタリアのリーグは一流選手の最終目的地ではなく、通過地点になってしまった」。ユベントスの昨年の収入は2億4100万ユーロ(当時のレートで約250億円)で、レアル・マドリードやバルセロナの半分にも満たない。アニエリ家からの融資も必要な状況だ。赤字が数年続いた後、ユベントスの負債は1億5000万ユーロ(約195億円)にふくらんでいる。ただし新スタジアムのおかげで、最近は収益が上がっている。昨年7~12月期には1億1300万ユーロ(当時のレートで120億円)の収益を上げた。

 今もアニエリは、ユベントスをヨーロッパでも最高のクラブと比べつづけ、外国に手本を探している。「もし完璧なクラブをつくりたいと思ったら」と、アニエリは言う。「イングランドとドイツとスペインの融合だろう」

 イングランドからは、スタジアムと試合当日のグッズ販売を取り入れる。スペインからは、ビッグクラブが放映権料を小さなクラブと分け合うのではなく個別に売る権利を取り入れる。ドイツについてアニエリは、「ドイツ株式会社」がクラブを支援している状況をうらやましいと感じている。この3ヵ国の長所を組み合わせることが、イタリアにとって理想だ。

「で、それが可能だと思うかい?」と、アニエリは言う。「無理だ」

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