ファーガソンとモイーズ。マンU新旧監督の共通点と相違点 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 スコットランド西部の労働者階級の家庭で子ども時代を過ごすという経歴は、イギリスの偉大なフットボール監督にはほとんど必須のものといえる。ファーガソンの前にも、同様の経歴を持つ偉大な3人の監督がいた。マット・バツビー、ビル・シャンクリー、そしてファーガソンが敬愛してやまないジョック・ステインである。

「人を動かすことについて私が成功を収めたとすれば、それはグラスゴーの労働者のなかで育ったことが大きい」と、ファーガソンは書いている。工業都市グラスゴーはファーガソンに、彼という人間の中核をなす価値観をもたらした。ひとつは団結の重要性、もうひとつはマッチョなリーダーシップだ。ファーガソンにとって、そして後任のモイーズにとっても、これらの価値観は政治的に左寄りのイデオロギーにつながっている。ファーガソンもモイーズも労働党の熱い支持者だ。

 しかし、ファーガソンの代役はすぐに務まるものではない。ミシガン大学の経済学者ステファン・シマンスキーは、クラブが本来持っている実力以上の成績をあげた監督を見極めるため、「サッカーノミクス・インデックス」という指標を考案した。これは1974~2010年にイングランドで指揮をとった監督たちが、選手年俸の総額から予想される順位よりもどれだけ上の成績をあげたかを示すものだ。この指標によるとファーガソンは、リバプールを率いたボブ・ペイズリーに次いで2位だ。

 ファーガソンはマンチェスター・ユナイテッドに、大変な付加価値をもたらしていた。この点が最も明らかになったのは2003年以降、最初にチェルシーが、続いてマンチェスター・シティがユナイテッドを超える金額を選手年俸に投じるようになってからだ。ファーガソンはプレミアリーグの最近7シーズンのうち、実に5シーズンを制している。

 モイーズに限らず誰が後任になろうと、そんなことはできそうにない。これからユナイテッドは凋落の時代が訪れるのを覚悟すべきだろう。
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