【ベルギー】同僚・川島永嗣が語る「S・リエージュが小野裕二と永井謙佑を獲得した理由」 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

「デビューできたことは嬉しいし、チームが勝てたのも嬉しいけど、もっと突き詰めないといけないことがあると思っています。まずはもっと、チームの戦術を理解しないといけない」

 取材中には、永井謙佑が何度も小野の背後に回り込み、様子をうかがいに来ていた。この日、永井はベルギーに到着したばかりで、スタンドから試合を観戦。S・リエージュは近いうちに、日本人選手3人を同じピッチに立たせるだろう。3人もの日本人選手を抱えたのは、クラブとして何か意図したものなのか、それとも単なる偶然か。「偶然です」と、S・リエージュのテクニカルディレクター、デ・サールは答える。

「(川島)永嗣のリールセでの活躍を見て、S・リエージュは獲得に動きました。そして足の速いストライカーを探していたところ、オリンピックで永井の活躍に目が留まりました。そして永井のプレイをJリーグで追っていたところ、小野についても知ることになりました。若くて潜在能力の高い選手を育成していくことは、S・リエージュのクラブ哲学です。それが偶然重なったので、同じ時期に獲得したまでです」

 また、川島が2シーズン半、ベルギーで結果を残してきたことも、「永井と小野の獲得に結びついた」と、デ・サールという。

 2010年夏、リールセにやってきた川島のベルギー生活は、連戦連敗からのスタートだった。想像していた以上にチーム状態が悪く、失点すると「あのゴールはアイツ(川島)のせいだ」と、チームメイトが更衣室で批判している声も聞こえたという。そんな逆境をバネに、川島はどんなに大敗しても最後まで諦めない姿勢を示し続けた。するとやがて、チームメイトやサポーターから信頼を勝ち得るようになったのだ。その勲章と言えるのが、2シーズン目に「主将」を務めたこと、そしてサポーターが選ぶ「チームMVP」に2季連続で選ばれたことだろう。

 S・リエージュが永井と小野を獲得した背景に、川島の存在があったのは間違いない。しかし川島は、「決して僕だけの影響じゃない」と語る。

「オリンピックでの活躍も影響しているだろうし、日本人がヨーロッパで活躍していることも大きな要因のはずです。しかも最近は、今回の永井や(小野)裕二のように、移籍金を払ってでも日本人を獲得したいと考えるヨーロッパのクラブが増えてきました。それはやはり、Jリーグという良い環境が日本にあり、そこから若い選手が育っているから。日本人の海外移籍が増えた一番の要因は、Jリーグにあると思います」

 続々と選手が海外に移籍し、Jリーグの空洞化を懸念する声は、たしかにある。しかし一方、海外組が活躍することで、Jリーグの価値を高めている側面もあるのではないだろうか。川島永嗣、永井謙佑、そして小野裕二......。Jリーグで三者三様の異なる物語を築いてきた男たちがS・リエージュでどんな奮闘を見せるのか、目が離せない。

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