【スペイン】今季も驚異の記録ラッシュ。メッシという名の「奇跡」は止まらない (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko
  • photo by Rafa Huerta

 そしてメッシ少年は成長し、25歳の若さですでにバロンドールを2回、ゴールデンブーツ(欧州リーグ全体の最多得点王)を2回受賞し、今年もその才能を余すことなく爆発させている。

 2012年だけで3つの記録を更新していると言えば、そのすごさが少しは伝わるだろうか。ひとつは年間を通してマークしたゴール数だ。それまでの欧州での最高記録、ゲルト・ミュラーの86ゴールを抜いて、年間通算91ゴールをマークした。ミュラーの記録は1972年に達成されたものなので、40年ぶりに記録を塗り替えたことになる。

 ふたつ目は1シーズンでのゴール数だ。2011‐2012シーズンにマークしたゴール数は、リーグ戦やカップ戦などを合わせて73。これも欧州リーグで過去最高の記録だ。そして3つ目は、アルゼンチン代表の試合でマークした年間ゴール数の25。世界中の代表選手で、1年間に25ゴールを決めた者はいない。これに、スペインリーグ史上の1シーズンにおける最多得点(50ゴール/2011-2012シーズン)、チャンピオンズリーグ史上の1シーズンにおける最多得点の記録(14ゴール/2011-2012シーズン)なども持っており、数え上げると本当にキリがない。

 過去の最高記録の更新などできないまま、一生を終えていく選手がこの世の中の大半を占めているというのに、メッシのこの記録ラッシュはまさに怪物級だ。「レオ・メッシを表現するための形容詞が尽きてしまった」と現地記者が嘆くのも、もっともだろう。

 だが、この素晴らしい記録の数々は、メッシひとりの才能のみで生まれたものではない。鉱山から掘り出された原石が、磨かれることなくダイヤモンドになることはないのだ。

 メッシがバルセロナに入団した当時、最初に教わったユースの監督が現バルセロナ監督のティト・ビラノバであり、その時のチームメートには、セスク・ファブレガスやジェラール・ピケがいた。つまり、今のトップチームの基礎がそのときからすでに育まれており、ここにまず、最初の奇跡があった。

 また、メッシがサッカーを始めた92年、バルセロナはクラブ史上初めてUEFAチャンピオンズカップ(現在の欧州チャンピオンズリーグ)を制覇し、バルサのサッカー哲学が確立され始めていた。

 ヨハン・クライフが、バルセロナでユースカテゴリーにもトップチームと同じようにプレイするように指導したのは88年からであり、これはメッシが生まれた1年後のこと。つまり、誰もが憧れるバルサのパスサッカーは、メッシの成長と共に熟してきたことになる。まるで、メッシが成長するのを待っていたかのように。ここにふたつ目の奇跡があった。

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