【クラブW杯】広島ならではの強みを発揮。来季につながる蔚山現代からの勝利 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 森保一監督は「ACLのいいシミュレーションになった」としつつも、「来年はチーム状況もメンバー編成も変わる。さらにチーム力を上げないと、ACLを戦い抜くのはキツい」と言い、森崎和もまた、「選手層が厚くないと、ACLは戦えない」と吐露する。

 実際、今季のJ1を見ても、ACLに出場した4クラブは軒並みリーグ戦で苦戦を強いられ、ついにはガンバ大阪がJ2降格という憂き目に遭っている。J1とACLを並行して戦うことの過酷さを証明する結果を前に、森崎和は「下手をすれば、J1で下(の順位)にいってしまう可能性もある」と現実を直視せざるをえない。

 とはいえ、その点に関して言えば、準々決勝から先発4人を入れ替えながら、5位決定戦に勝利できたことは大きな収穫だろう。森崎和は「メンバーが変わっても勝てたし、自分たちのサッカーができた、という点では意味ある試合だった」と、手応えを口にする。

 今季途中にJ2水戸から移籍加入し、5位決定戦で今大会初めてピッチに立ったDF塩谷司は、「来年はACLもあるし、いい経験をさせてもらった」と言い、こう続ける。

「ACLはタフな戦いになるし、(J1と並行して行なわれるために)日程も厳しくなるが、その分、自分の出番も多くなると思う」

 これは、長年継続して自らのスタイルを築き上げてきた、広島ならではの強みである。一口に「選手層を厚くする」と言っても、選手を集めさえすればいいというものではない。そこに確固たる方針がなければ、選手の頭数は揃っても、チームとしての質を保つことは難しい。森保監督は言う。

「我々はひとつのスタイルを持ったチーム。そのスタイルを選手は発揮してくれた。世界の舞台でも我々がやっていることは通用するんだという自信は、来年のJ1でもACLでも生きてくる」

 また、森崎和はこうした国際大会において平常心でプレイできるかどうかのポイントとして、「外国人慣れ」を挙げ、こう語る。

「ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督/現浦和監督)のとき、シーズン前に毎年トルコでキャンプをしていて、そこでいろんな国のチームと対戦した。その経験があったから、この大会でも縮こまったプレイにならなかったんだと思う」

 今季、J1で初優勝を果たした広島だが、決してこの1、2年で急に力をつけたわけではない。それは長年の継続に裏付けられた結果であり、だからこそ、今大会での経験がまた、来年につながることが期待される。

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