【イタリア】「ウナギのよう!」。長友佑都に好プレイが戻った背景 (2ページ目)

  • 内海浩子●文 text by Uchiumi Hiroko
  • photo by SINO/FOOTBALL PRESS

 彼が就任した時、モウリーニョのほとぼりもようやく冷め、新たな一歩を踏み出す危機的必要性があった。そんなグッドタイミングだったこともあろうが、サネッティのような自分より年上の選手やカッサーノのようなかなり個性的な選手もいるのだから、そこは彼の人並ならぬ力量であろう。試合に対するマニアックなほどの入念な準備や戦術研究がこの監督の長所として取り上げられているが、それが試合で生かせるのは彼が選手たちから信頼を勝ち得ているからこそ、だ。

 ストラマッチョーニはイタリア人らしい監督だ。彼の戦い方は、オペラ発祥の地、イタリアが好むイタリアンスタイル。つまり、乱暴な言い方をすれば、花形テノールのためのサッカーだ。粘り強くがっちり守って、スターFWの能力によって得点して勝つ"カテナッチョ"などその典型例だ。

 ストラマッチョーニが守備的監督だとは言わないが、ミリート、パラシオ、カッサーノら才人が敵エリアで輝くための戦法で結果を出していることは事実である。突出した個の力を武器に勝利をもたらそうとする彼のサッカーは、ハーモニーと全員のハードワークによってどこからでも点を取れるサッカーを掲げるユベントスのコンテと対照的である。

 昨季から大幅にメンバーが入れ替わった今のインテルはまだ"若い"。せっかく首位ユベントスとの直接対決に快勝して(結果は3-1)差を1ポイントとしたのに、次の試合を落としたため(アタランタ戦、結果は2-3)、たったの1試合で再び以前の4ポイント差に戻ってしまった。続くカリアリ戦でも、ユーベが引き分けていたため差をつめるチャンスだったのに、白星を飾れなかった(結果は2-2)。

 今はまだまだ順位を気にする時ではないとはいえ、こういうところにタイトルを取るチームとそれに準じるチームの差が見えたりするものである。このチームをいかに成人へと導くかは、ストラマッチョーニにとって未知の試練となるだろう。

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