【EURO】至高の芸術。
「パスショー」だけではない王者スペインの強さ (2ページ目)
とはいえ、そんなパスワークだけで、スペインの強さが成り立っているわけではない。それどころか、この試合に関して言えば、スペイン自慢のパスワークは、圧倒的なボールポゼッションと表裏一体の危険な兆候さえ見せていた。
というのも、3トップの両サイドを務めたシルバとイニエスタが、中央に入ってくる傾向が強かったからだ。狭いところをワンツーなどで華麗に抜けていく攻撃は、ハマれば確かに美しい。
だが、ボールが中央ばかりに集まれば、攻撃は停滞しやすく、逆にカウンターを受けやすくなるのも事実。つまりは、この日のスペインのパスワークには、少なからず危うさもあったのである。
にもかかわらず、スペインが4-0という大勝を収められたのは、スペインの武器がパスワークだけではないからこそ、だ。そのことが実に分かりやすい形で得点シーンに表れたという点で、この試合は実に興味深かった。
まずは、攻撃から守備への切り替えの速さである。これが表れていたのが、1点目と3点目だ。
1点目はイニエスタのスルーパスにシルバが抜け出したが、これをDFがカット。しかし、DFが奪ったボールの処理に遅れた瞬間を見逃さず、トーレスがボールを奪い返して自ら決めたもの。また、3点目はイニエスタが一度はドリブルを止められながら、すぐに奪い返してシルバにつないだボールが、トーレスへのスルーパスにつながった結果だ。
得点に直接つながったということでは、この2回だが、失ったボールをすぐに「奪い返しにいく速さ」は、1試合を通して終始スペインに見られた強さである。
そして、もうひとつがシュートへの強い意識と、その正確性だ。スペインはこれほど圧倒的なパスワークを操りながら、それに酔ってシュートを忘れてしまうことがない。
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