【EURO】04年ポルトガル対イングランド、混在するファンが美しかった (3ページ目)
FCポルトのチャンピオンズリーグ優勝が自信になっていたのは間違いない。欧州のビッグクラブで活躍する選手がスタメンの大半を占めていたことも見逃せない。だが、それ以上に目を凝らすべきはサッカーの質だった。徹底的に攻めた。両ウイング(フィーゴ、C・ロナウド)のドリブルにデコの展開力を絡めた鬼気迫る攻撃は、観衆の大声援を誘った。怖々攻めていないところが、従来との違いだった。
イングランドも3回に1回はパンチを撃ち返す。尻軽になったポルトガルがそこでヒヤリとさせられることも、試合の緊張感を高めた原因だった。
スタンドはポルトガル人とイングランド人が入り乱れるように埋まっていた。イングランド人とポルトガル人の間に、どういうわけか境界線はなし。友好国同士の対戦だからだろうか。危ない感じは一切なかった。観客の全てが集団的な応援を忘れ、試合観戦に没頭する姿は、それはそれで美しかった。
後半に入っても好勝負は続く。ポルトガルはいい感じで攻め続けたが、イングランドもそれに慣れてきた様子。するとポルトガル代表監督のスコラーリは戦術的交替を敢行する。ベンチに下げる選手と異なるポジションの選手をピッチに投入した。下がったのはコスティーニャ。投入されたのはシモン。守備的MFを1人下げ、シモンを左のウイングに配置した。それまで左ウイングを務めていたフィーゴは真ん中へ。布陣は4-2-3-1から4-3-3的な4-1-4-1に変化した。
フィーゴのウイングプレイは。時間の経過とともにスーパースターにありがちな独善的なものになっていた。それがポルトガルの攻めのリズムを少なからず狂わせていた。真ん中にポジションを移しても、フィーゴの“濃い”プレイは続いた。
するとスコラーリは、チームきってのスター選手をスパッとベンチに下げた。代わりに投入したのはセンターフォワードのポスティガ。思わぬ戦術的な交替にどよめく場内。だがすぐさま場内には別のどよめきが湧いた。初戦のギリシャ戦以降、不調でスタメンを外れベンチを温めていたルイ・コスタが、3試合ぶりにピッチに送り込まれたのだ。
フィーゴとルイ・コスタは、それまでポルトガルサッカー界を支えてきた2枚看板。世界の誰もが知るスーパースターだ。スコラーリはその1人をベンチに下げ、ベンチ要員に格下げしていたもう1人を復活させた。
フィーゴ交替に呆気にとられていたファンは、ルイ・コスタ投入でふたたび活気づくことになった。それまでルイ・コスタに代わってチームを引っ張ってきたデコは、右サイドバックに回った。
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